●質問

 質問には相手がYes/Noで答える「Closed Question」と、自由に答えられる「Open Question」があります。1on1では部下の考えや気づきを引き出すためにもOpen Questionの方が有効です。Closed Questionでは、上司と部下というポジションパワーが無意識に影響し、上司の意見を押し付けることになってしまうことも多いからです。例えば「君は将来〇〇がしたいんだね?」と言ってしまうと、部下は「はい……」としか言えないかもしれません。そこで「君は将来、どんな風になりたいの?」と聞けば「実は〇〇を目指したいんです」と本音を引き出せるかもしれません。

 また「過去」より「未来」に向けた質問をしていくことも意識すべきです。過去の質問ばかりだと、部下は上司に詰められているように感じます。なぜ、できなかったという原因分析も大事ですが、どうすれば解決できるかを考えることの方が効果的です。

●承認

 承認には「結果承認」「経過承認」「存在承認」の3種類があります。日本の企業内のコミュニケーションで多いのは、仕事の成果が出た時に「よくやったな!」と語りかけるような結果承認です。しかし、優れたマネジャーは経過承認を実践します。例えば、部下の仕事の経過を見て「この営業の働きかけ方がいいな」と語りかけるようなコミュニケーションです。より優れたマネジャーは存在承認を実践しています。存在承認というと大袈裟に感じる方も多いのですが「目を見てあいさつする」「名前で呼ぶ」「仕事を任せる」ことも存在承認の一つです。

 日本は、ほかの国に比べて社員のエンゲージメントが非常に低いという調査結果をよく目にします。エンゲージメントを高めるためには、自身の存在が承認されていることをメンバーが常に感じられていることが重要なのです。

 こうしたスキルをマネジメント側は身につけるためには、何度も研修を繰り返し行う必要があるでしょう。1on1が始まった後でも、実践して出てきた問題や悩みを解消するためのフォロー研修を定期的に行っていくとよいでしょう。

■Point2
1on1の成果を左右するのは「部下側に対する研修」

 多くの企業が、上司向けの研修だけを実施していますが、1on1を成功させるには部下に対する研修が大切です。1on1を何のためにするのかという目的とルールを部下にもきちんと理解してもらい、双方で歩み寄るような姿勢が、1on1の成果を大きくします。部下側が1on1に期待しすぎて、齟齬(そご)が生じて失敗してしまうこともあります。リアルとオンラインにかかわらず、部下側が1on1に消極的な理由は主に2つあります。

 1つ目は「この上司と毎週話したくない」というもので、1on1の基盤である信頼関係が上司と部下の間にできていないことに起因するものです。「上司が嫌い」「上司が話を聞いてくれるとは思えない」というのも同様です。

 2つ目は「同じ相手と定期的に話すほどネタがない」といったことです。こちらも問題の根底には「腹を割って毎回話すほどの関係性ができていない」ことにあります。米ギャラップの調査によると、会社を退職する理由のトップは「上司」ということだそうです。「会社」という人よりも圧倒的に多くなっています。そこで、1on1に入る前に部下側にもこの2点を解消してもらうための研修が必要になります。