まずは、上司との関係性を改善するための研修です。既に、上司に対して苦手意識のある部下は、上司を色眼鏡(アンコンシャスバイアス)で見ている傾向にあるので、私は「上司を見る眼鏡を変えてください」とよく話します。人間は基本的にマイナス思考なので、つい嫌な方ばかりを見てしまいますが、誰にでも一つくらい良いところがあるはずです。

 しかし、そう話した後でも、かけ直す眼鏡は「透明な眼鏡」ではありません。嫌いな人に対しては透明の「良い眼鏡」をかけないと、良い人物には見えないのです。私は「よく見える眼鏡」をかけてくださいと伝えています。

 「自分が上司をどう見ているのか」という質問の答えを、最初の時と「よく見える眼鏡」をかけたときの違いを書き出してもらうこともあります。関係性を可視化することで、自分の見方に気づいてもらうのです。

 話す内容に対しては「時間と空間」というフレームで思考を広げてみましょうと提案しています。時間軸を伸ばすことで、直近だけの話ではなく、半年後や1年後、2年後、5年後、10年後、50年後、さらには自分の退職後や死後まで、事業や会社がどうなっているのかを考えてもらうのです。

 空間軸のスタートは「自分」ですが、自分の話だけでなく、チームの話や部署の話、会社、業界、地域、日本、世界、宇宙へと、こちらも広げていくと見えてくるものが異なるはずです。両方を伸ばす、このフレームを使うことで話す内容はきっと広がりを見せるでしょう。

 部下への研修では、実際に1on1の上司側の役割を体験するワークショップも実施しています。なぜなら、部下が1on1に期待しすぎて「ちゃんと聴いてくれない」「話が進まない」など不満が出ることがありますが、実際にやってみると傾聴、質問、承認というのがいかに難しいかということが実体験できるからです。

 上司役をやってみると、第一声に「最近仕事はどう?」(「今日は何を話そうか?」とテーマも部下に委ねるのが正解)と部下役に声をかけてみたり、「最近仕事がうまくいかなくて」という部下役に「どうして、うまくいかないんだ?」と言ってしまったり(「仕事がうまくいかないんだね」と反復するのが正解)、詰問になってしまったり、「じゃあ、こうしたらいいよね」とすぐにアドバイスしてしまったりと、その難しさを知ることで上司の気持ちを理解できるからです。時間をかけて一緒に1on1をつくりあげていこうという双方向の姿勢に変わることが、1on1の効果を最大化することにつながっていくのです。

■Point3
長期的な効果を測定する

 ルールのところでも説明した通り、1on1の原則はそこで話されたことを他言しないことです。ただし、1on1を行うことの効果は定期的に測定しておくと、効果も見えてきます。中身が見えないので、別のツールを使って測るのです。

 こうした取り組みで多いのは、部下と上司の双方に対して定期的にアンケートを取ることです。1on1にどんな効果を感じているのか、マネジメント側の傾聴や質問はどうかといったことを尋ねるとよいでしょう。

 ほかには、社員のメンタルチェックを行うツールやチェックシートなど既存のものを使ってもよいでしょう。