それにしてもこのニュースは、扱いも小さく話題にもならなかったが、あの時の後期高齢者医療制度をめぐる騒ぎを思い出すと、この無関心さをどう考えればよいのか戸惑うのである。

後期高齢者医療制度は、5年余りの議論を経て、2006年6月に当時の自民党の政権下で法制化された。だが、制度が施行に移される08年4月ごろになって、何がきっかけか、テレビを中心に急速に反対ムードが盛り上がった。野党だけでなく与党の自民党の議員さんまでもが、連日のようにテレビで、「朝令暮改と言われようとこんな制度は許せん」と世論をあおり、ついには後期高齢者医療制度廃止法案を国会に提案するという事態にまでいってしまった。

当時、中央社会保険医療協議会(中医協)の専門委員であった私は、悪い制度とは思っていなかったから、「議員さんははしゃぎ過ぎではないか、自分たちで決めた制度という当事者意識を持つべきだ」と世の流れに逆らう発言をした覚えがあるが、こういうのをポピュリズムによる集団ヒステリーと言うんだろうなと、無力感とある種の恐怖感を感じながら成り行きを見ていた。

高齢者医療制度の最大の論点は財源問題にあるが、この制度では、公費が5割、健康保険組合など他の保険団体からの拠出金が4割、残りの1割を高齢者が負担するという仕組みで、しかも、高齢者医療の中身についても、相当に配慮がされている。だから、応分の負担を強いられる若い人たちではなく高齢者が大反対するという構図がどうにも納得できなかったのである。

大騒動から4年、廃止するはずの制度がそのまま継続されてきている。今のところ特に大きな問題はないようだが実際はどうなのか。制度に問題があろうとなかろうと、廃止すると決めた以上、何が何でも廃止するしかないのか。確かに、もう1度朝令暮改をやるとなれば、それも困ったことだ。

(中日新聞 2012年4月26日掲載「長寿の国を診る」より)