梅雨明けが危ない、のは毎年のことで、よく分かっているのに、今年も梅雨明けに多くの人が熱中症で倒れた。急激な気温の上昇という変化に加え、まだ体が暑さに慣れていないからである。気象庁によれば、今年の夏の温度変化は例年並みないし、例年より高めであるという。五年、十年という中長期でみると、平均気温は上昇し続けているから、熱中症のリスクもあがっているはずだ。

私たちが子どものころには、日射病と言っていたが、今の熱中症は当時とは発症の頻度も背景もまったく違う。熱中症はその実態について相当に分かってきているが、問題は、その成果がどう対策に生かされているかだ。青少年では運動時に発症する頻度が高い。教育界では、これを受けて防止策をたて、発症頻度を減少させた。また、壮年の男性では屋内で作業中に発症することが多く、企業は作業環境の改善に取り組み、成果をあげている。

ところが、集団によっては有効な対策が施されないだけでなく、情報そのものが浸透していないことも稀ではない。屋内作業について、大企業での対策は進んでいても、中小企業では遅れているとか、高齢者では一向に倒れる人が減らないなどはその典型である。

熱中症といえば屋外の炎天下で発症すると思っている人が多いが、高齢者では屋内で発症し、しかも気づいたときには手遅れで死亡という例も多いのである。例えば高層階住宅の最上階で、熱帯夜に冷房なしに一晩過ごし、明け方に意識不明となって発見されるといった場合である。

なぜこんなことが起こるのだろうか。室内でも熱中症は発生するということ、夜間に室温の方が外気温より高くなる場合があるということを知らず、室温が危険域を超えたときに、冷房など、どのようにすれば安全かという知識や情報もゆき届いていないのである。

そのうえ、高齢者では体の温度感覚が鈍くなって、異常高温でも暑さを感じず、クーラーのスイッチを押さないことも多い。有効な予防対策とは危険度の高い集団を判別し、その集団にふさわしい方策を指導徹底させることだ。

独居や老々世帯の高齢者にインターネットでいくら注意を喚起しても効果が得られないのは当然であり、こういうのを対策とは言わないのである。

(中日新聞 2012年07月26日掲載「長寿の国を診る」より)