医療・介護の皆保険制度は今後どうなるのか。何も手を打たずに今のまま続けていけば、制度は破綻する。十年も二十年も先のことではないだろう。なぜそんなことになるのか。皆保険制度が成立するには、保険料が医療費を上回っていること、その保険料を国民は負担できることが大前提だが、すでにその前提が崩れかけているのである。医療・介護費用があまりにも急速に増加し続けているからだが、なぜそんなことになっているのか。

その理由の第一は高齢化である。高齢者が急速に増え、医療・介護の需要も増えた。三十七兆円の国民医療費のうち、半分以上を人口の24%の六十五歳以上で使用している。入院も、外来も、六十五歳以上の高齢者が増えているのである。

第二に技術の進歩である。二十世紀に科学・技術は驚異的な進歩をした。放射線などの診断機器は巨大化し、人体の内部を精密に映し出す。治療機器もロボットによる手術が当たり前になるなど、今やどこの病院も機械、機械である。高額な機器や高度な技術は医療費に跳ね返る、これが半端ではない。

第三には、人権意識の高まりと価値観の多様化がある。医療技術の進歩は技術の適用を広げ、治療の選択肢を増やした。呼吸器と脳死、終末期と胃ろう、今問題になっている出生前診断などもそうである。

では、増え続ける医療費にどう対応するか。皆保険制度の維持が大前提なら、保険料や自費による負担を増やすか、医療費の増加を止めるしかない。制度の支え手である若者は減り続け、増えるのは高齢者だから、負担の限界は見えている。そうなら、あとはどうやって医療費を抑えるかしかない。

そんなことができるのか。できる、ただし、医療提供のあり方を根本から変えるという構造的な変革が避けられない。第一に、高齢者の医療需要が増えているのだから、これまでの病院で徹底的に治すという医療から、高齢者に合った医療に変える。第二に、いつでも好きなところでお金の心配をせずに医療を受けるというあり方を、必要な医療を適切なところで、最少の負担で受けるというシステムに変える。第三に、これまでの利権構造に手を入れる話だから、関係者の抵抗は強いだろうが、それを覚悟してやり抜くことである。

(中日新聞 2013年3月29日掲載「長寿の国を診る」より)