地域包括ケアといわれても何のことだと思われるかもしれないが、これからの超高齢社会の在り方を示す重要なキーワードで、社会保障制度改革国民会議でも議論になった。

地域包括ケアとは、年をとっても住み慣れたところで最期まで安心して暮らしてゆくにはどんな社会がよいかという社会システムの概念である。ここでいう地域とは単に場所をいっているのではなく、住民を含め環境、資源などで構成される地域社会のことを意味している。では、何をどのようにすれば安心して暮らせる社会になるというのか。

わが国は人生六十年から八十年、九十年へ、高齢者が十人に一人から三人に一人へ、人口が一億2千万人台から8千万人台へという超高齢社会に変わることは、何度も述べてきた。そんな社会で高齢期の三十年間をどのように生きてゆけばよいのか。

年をとれば誰もが弱り、そして倒れ、死ぬが、それまでは皆元気である。だから元気なときをできるだけ長く楽しく生きられるようにする。そして動けなくなったら気兼ねせずに、支援を受けられるようにする、こんな社会なら安心できるだろう。

地域包括ケアとは、そんな地域社会を実現するための基本的な考え方を示したものである。これをまとめた地域包括ケア研究会の報告書には、「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護のみならず、福祉サービスを含めたさまざまな生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制」とある。人が地域で生活してゆくために欠かせないものをシステムとしてどう保証していくかである。

ひと口に地域といっても、高齢化の程度も、所有している資源も、自然環境もまったく異なる。何よりも人間関係の密度などは、都会と田舎では極端に違う。これほど違いのある地域をひとくくりにして、こういうシステムや体制が良いですよとはとてもいえるものではない。

基本的な考え方を示したら、地域ごとにどのような社会にするのか、したいのかは行政が事務局となって関係者が議論できる場を設け、どのようなシステムが合うのかを住民も参加して設計し、実現してゆく。超高齢社会における最大の課題とは、街づくり、地域づくりなのである。

(中日新聞 2013年9月29日掲載「長寿の国を診る」より)