記事を読んでびっくりした。二週間たっても、もやもやがとれない。ことを荒立てるような意図はまったくないが、見過ごしてよいことではないと思う。

十月一日付の中日新聞経済面の「社会保障と税一体改革」というタイトルの鈴木亘・学習院大学教授と、日本総合研究所の西沢和彦上席主任研究員(国民会議委員)による消費税と社会保障制度改革国民会議についての対談記事である。どんな会議であっても、委員として参加したからには、自分の意見と会議の結論が異なっていたからといって、結論が出たあとで、それを公の場で否定するようなことはルール違反だと思うが、まあそれはよいとしよう。

どうにも納得がいかないのは、「官僚が政治家や医師会などと、調整して作った文書が国民会議の報告書」という西沢氏の発言である。これを見て国民はどう思うだろうか。「国民会議も役人と政治家と医者とで仕組んだ茶番劇だったのか、やりきれんなー」ではないだろうか。

仮にも、国民という名が付けられた会議である。これほど国民のためを意識し、強調している会議は多くないだろう。私がこの発言をさまつなことと見過ごせないのは、自分も参加していた会議の報告書が、いいかげんなものだと思われることにじくじたるものがあるというだけでなく、それよりも社会への影響の大きさを懸念するからだ。

中日新聞は地方紙とはいえ、多くの発行部数を持つ伝統ある新聞である。その紙面で、当事者が報告書を否定するからには相応の根拠と覚悟がいる。政治家が誰かは特定できなくても、西沢氏はどの党がいつどんな調整をしたかは明らかにすべきである。ましてや、医師会といえば固有名詞と同じだから、日本医師会がどのように関わったのか、内容を紹介することに差し障りはないはずだ。

なぜ、こんなにもこだわるのか。会議は報告書の作成に至るまで全て公開であり、どう考えても、そんなことがあったということが信じられないからである。

加えて、医療関係については、それなりの知己、友人もいる。それでも、西沢氏の言うようなことは全く聞かない。私の知らないところで、報告書が意図的に操作されていたとすれば、国民に自らの不明を恥じわびるしかないが、それはそれで、国の将来を考えると大問題であり、いずれにしても明らかにすべきである。

(中日新聞 2013年10月29日掲載「長寿の国を診る」より)