アンチエイジングが大流行である。「抗加齢」とも呼ばれ、高齢者にとっては「抗老化」と同じ意味になる。

老化には、誰にも生じて例外がない(普遍性)、遺伝子によって規定される(内在性)、確実に進行し戻らない(進行性)、脆弱(ぜいじゃく)化をもたらす(有害性)-という四原則がある。原則とは定理・公理だから、変わらない大前提である。

アンチエイジングでは、どうもこの原則を認めないというか、これに挑戦し、これの克服を目指しているようなところがある。老化は病気だと言ったり、人類の究極の目標は、不老不死にあるとして、これを目指すと言う研究者もいる。一方で、このような考え方に不快感を示し、強く警鐘を鳴らす人も少なくない。

私も、アンチエイジングについてどう考えるか、という質問をよく受ける。アンチエイジングについて、自分の意見を公式には発言したことはないが、実は私の考えははっきりしている。私は老化の四原則をそのまま受け入れる。

だから、老化や死を否定、あるいは拒否するような考え方を認めない。ましてや、それらを制圧するということは大変な問題を抱えていると思っている。なぜか。そんなことが現実になったらどうなるか、ちょっと想像してみればよい。人口は限りなく増え続け、間違いなく人類は滅亡するだろう。

では、なぜ老化の研究を行うのか。老化や死は避けられなくても、老化による障害や、それに伴う病気が抑えられるものなら、その方がよい。少なくとも、高齢者が自立して生活できる状態を最大化できる。そのためには、老化とは一体なんなのか、その本態の解明が必要である。

あれもこれも反対などというつもりは全くないが、以上、述べたような点についてだけは同意できない、というのが私の考えである。アンチエイジングには、もっと幅広い意味があるのだろうと思うが…。ということで、対抗するというようなつもりではなく、より分かりやすくという意味で「エイジングウェル(好加齢)」を長寿医療センターの合言葉とした。

アンチエイジングもエイジングウェルも、抗と好との違いはあるが「こう加齢」で同じである。そして、語呂合わせのようで恐縮だが、「幸加齢」を目指すのが、私どものセンターの目標である。

(中日新聞 2009年1月30日掲載「長寿の国を診る」より)