「これ以上保険料が増えるようなことになるとどうなるか、えらいことになりますヨ」。地方自治体の首長さんの嘆願とも脅しともとれる発言である。介護福祉施設等を代表する委員からは、人材難、財政難で経営は限界だという訴えが続く。来年の介護保険の報酬改定について検討を行っている国の介護給付費分科会は緊張度が高い。

二〇〇〇年にできた介護保険は、高齢者の急増に対応して当初の利用者約百四十九万人が、〇七年四月には約三百五十六万人と倍以上に増え、総費用は三.六兆円から七.四兆円(〇八年度予算)と倍増した。給付は、保険料で半分、残り半分は公費、すなわち国と都道府県とで37.5%、市町村が12.5%を負担している。

利用者が増えれば、保険料も高くなる。当初、月平均で二千九百十一円だった六十五歳以上の保険料は、今では四千九十円である。保険制度とは給付費よりも、保険料の方が大きいという条件で成り立つが、その大前提は、保険料を支払ってもらうことである。ちなみに、介護保険の滞納率は年金からの天引きのため1.8%だが、国民健康保険は19%(四百八十万世帯)である。

創設以来、今までに介護保険の改定は二回行われた。医療であれ介護であれ例外を認めないという聖域なき改革のもとに介護報酬も改定のたびに下げられた。高齢者が増えれば要介護は増え、利用者は増える。増えれば施設も介護従事者も増やさなければならない。当然、お金がかかる。

これ以上お金をかけられないと改定率を下げ介護報酬を抑えれば介護従事者は増やせず、介護サービスは制限され、サービスの利用者は限定される。必要なら十分な介護サービスをと考えるなら、他からの財源がない限り保険料を上げなければならず、悲鳴があがる。これでは、八方ふさがりである。

何度も繰り返すが高齢者が増えれば、要医療、要介護状態は増える。増えれば、お金はかかる。その負担をどうするかだ。誰もの願いは、この国に生まれ育ち良かった、でなければせめて、いろいろあったが悪い人生ではなかったと、最後をしめくくれることではないか。

「うば捨て山は許せん」と言うだけなら簡単だ。どうすれば、それをなくせるかが問われているのである。政治家にとってこれほどやりがいのある時もないだろう。

(中日新聞 2008年10月31日掲載「長寿の国を診る」より)