こういうのを青天の霹靂(へきれき)というのだろう。今年もエッ、ギョッという話題や事件に事欠かなかったが、定額給付金もそうだ。何しろ二兆円である。1人あたり一万二千円くれるという。しかも、ある日突然である。「エッ何の話、本当に」。六十五歳以上と十八歳以下にはさらには八千円ボーナスがつくというから、ちょっとうれしい臨時収入だ。

にもかかわらず、そもそもこのような使い方で良いのか、高額所得者に配分するのはどうかなど、混乱といってよいだろう、妙な状況が続いている。目的は何なのか。何やら選挙を控えて下心が見え隠れしないでもないが、低所得者への生活対策として定額給付金という現金で支援し、消費行動を刺激して市場を活性化させるということのようである。これによってどれほどの経済効果が生まれるのか、素人にはよく分からない。

一方、医療、介護、福祉関係者の間では、なぜこちらに回さないのかという疑問と批判がわき起こっている。何しろ、医師が足らん、病院が赤字だ、介護従事者が足らん、待遇が悪すぎる、医療崩壊が起こる、介護難民が出るといった物騒な会話が日常的に飛び交っている世界である。極めて率直な感想であり、同じ業界にいる私にはよく理解も共感もできる。

定額給付金をめぐり、メディアでは、受給の資格や配分の仕方についての議論ばかりが盛んだが、二兆円を配分すると聞いて、私が反射的に思ったのは、“エッ、どこにそんな金があったのか”である。財政投融資特別会計の金利変動準備金がその財源だ、といわれても、私のもやもやは何にも解消されていない。

金がない金がない、だがら、無駄を削れ予算も人員も減らせ、医療であれ教育であれ、改革には例外も聖域もない、が政策の大前提であったはずだ。総理が代われば、政策が変わってあたりまえといわれれば、そうなのだろうが、それにしても二兆円である。

医療や介護に金を使うよりも、国民へ現金を渡すことの方が優先度が高いと、大所高所から判断したことに文句はないが、なけなしのお金を使うのだから、二兆円を何倍もの効果につなげるのは当然だ。そして狭い了見かもしれないが、医療、介護の現場は、待ったのきかないところまで来ていることも肝に銘じておいてほしい。

(中日新聞 2008年11月28日掲載「長寿の国を診る」より)