東日本大震災で1200人のボランティア

キャンベルさんは災害が起きたら、できるだけ早く現地へ行き、地元の人たちと話をして被災状況を把握することを心掛けている。東日本大震災の時は3日後に東京へ飛び、在日米国大使館職員や東京で働く米国人のボランティアなどの協力を得ながら、岩手県南部の大船渡市に向かった。

北米トヨタから寄贈されたトラックを囲むAHVのスタッフ(左がキャンベルさん)
北米トヨタから寄贈されたトラックを囲むAHVのスタッフ(左がキャンベルさん)

ボランティアに通訳をしてもらって大船渡市の戸田公明市長に面会し、AHVの活動を説明して支援を申し出た。市長は突然のことで少し驚いた様子だったが、快く受け入れてくれた。

AHVのスタッフは約7カ月間滞在し、1200人のボランティアを集め、壊れた家の修理や片付け、排水溝の掃除、がれきの撤去などを手伝った。ボランティアのうち約700人は日本人、残りの約500人は外国人だった。東京などに住む外国人の他、米国、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ、中国、韓国、香港などからも多く駆けつけた。個々の都合に合わせ、東京から週末だけ来たり、海外から1週間とか1カ月滞在する人もいた。

戸田市長が当時の様子を説明してくれた。
「被災した住宅のヘドロ落としから排水溝の清掃までいろいろ手伝っていただき、本当に頭が下がる思いでした。地元の人たちも精神的に大変な時でしたので、非常に励まされたと思います。お年寄りも“なんとまあ、どこの国から来たんだべ、この人たちは。おらのうちの掃除してくれたぁ”なんて喜んでいました」。

その年の8月初めに市内で七夕祭りが行なわれ、ボランティアの人たちも準備を手伝いながら参加した。地元の女性は浴衣を着て提灯を持ち、男性はいなせな恰好をしたが、外国人にはそれが珍しかったのか大いに楽しんだという。

大船渡市はAHVの支援をきっかけに米国との交流が盛んになった。米国大使館職員との面識ができ、毎年7月4日の独立記念日の式典に市の職員が参加したり、学生同士の交流も行うようになった。また、東京から駆けつけてくれた外国人ボランティアの人たちとはお祭りなどを通して今も交流が続いている。

戸田市長は言う。
「それもこれも、キャンベルさんが火をつけたんです。大変すばらしい方です。地球の反対側からこんな遠くまで駆けつけてくれたのですから。AHVのことは決して忘れません」。

「世界では多くの問題が起きている」

被災地には多くのボランティアが集まるが、彼らを有効に活用するには支援を必要とする所にうまく配置しなければならない。そのため、AHVでは専門のコーディネーターがボランティアの振り分け(配置)などを行っている。

被災地支援のプロジェクトチームにはボランティアコーディネーターの他、建設関係、コミュニケーション、資金集め、ロジスティックス(被災状況を把握して再建支援を考える)などの専門家が含まれる。キャンベルさんは自分で備えていなくても、個々の分野に詳しい人を集めれば効果的なチームを作れるという。

「それはビジネスの世界でも同じです。どんなビジネスを始めるにも、誰と一緒にやるか、適任者を見つけることができるかが重要なのです」。

また、インターネットでボランティアを集める上で工夫していることがある。災害時にボランティアをしたいと考えている人がAHVのサイトをアクセスしやすいように言葉の使い方に注意する。例えば、東日本大震災の直後であれば、「ジャパン」「ツナミ」「トーホク」「ディザスター(災害)」「ボランティア」などのキーワードを使ってボランティア募集の告知をする。

被災地の支援活動は大変な仕事で時にはリスクを伴う。病気の人やケガをした人などにも接触するので、健康リスクもある。実際、ハイチへ行った時は感染症にかかってしまったという。病気になって、次に被災地へ行くのに不安になることはないのか。

キャンベルさんは言う。
「もちろんリスクがあることはわかっているが、多くの人が助けを必要としています。だから私たちはこの活動を始めたのです。あれこれ思い悩むより、とにかく行動することです」。

キャンベルさんは2014年10月、世界や社会にインパクトを与えた60歳以上の米国人に贈られる「パーパス・プライズ賞」(以下、PP賞)を受賞した。これは、以前当コラムで紹介したベビーブーマー世代を応援するNPO団体「アンコア」が主催しているものだ。

10月28日、アリゾナ州テンペで行われたPP賞の授賞式はニューヨーク・タイムズ紙など主要メディアで大きく報道され、キャンベルさんを含む受賞者6人の活動は広く知られることになった。60歳を過ぎて社会に役立つ活動をしているシニアを表彰することでその活動を社会に広く知らしめ、他のリタイア期を迎えた人たちにも影響を与えたいというのがPP賞を創設した趣旨である。その目的は十分果たされていると言って良いだろう。

賞金の10万ドル(約1200万円)はすべてAHVに寄付したというキャンベルさんは最後にこう話した。 「世界では本当に多くの問題が起きています。それらをなんとかしようと活動している人たちと一緒にいると、私もエネルギーが湧いてきて元気になるのです」。

休暇中、水上飛行機でアラスカ旅行に出発するキャンベル夫妻
休暇中、水上飛行機でアラスカ旅行に出発するキャンベル夫妻