新しい人生のスパイスを求めて

大手半導体・電子部品メーカーのインテル(カリフォルニア州サンタクララ)でテクニカルマーケティングマネジャーを務めたジム・ニコルソンさん(64歳)は、2013年12月に退職した。仕事の内容も待遇も満足していたが、セカンドライフをひかえ、「新しい人生のスパイス」が欲しくなったのだという。

刈り込んだ枝を運搬するジム・ニコルソンさん

ジムさんはアウトドア活動が大好きで、以前からリタイア後は戸外でゆったり働きたいと考えていた。そこでアンコアの支援を得て、自然遺産や歴史的建造物などの保護活動を行っているNPO団体「TTOR(The Trustees of Reservations マサチューセッツ州レオミンスター)」の担当者と話し合いを進めた。そして2014年1月から1年間、週20時間のパートタイムで働くことになった。

170人の正規スタッフを抱えるTTORは同州内の112カ所の景観名勝の森林渓谷、庭園、滝、自然公園、ハイキングコース、歴史的建造物などを保護し、人々にその魅力を広く知って楽しんでもらうための啓発活動を行っている。その一環として地域での集会や交流会を開いているが、ジムさんはそれらのイベントを企画運営し、進行役も務めている。また、ボランティアを集めて、自然公園や庭園などを維持管理する活動も行っている。インテル時代の経験なども話しながら、ボランティアの人たちと楽しく接するのでとても評判が良いという。

さらにTTORでは、自然遺産や建造物などの維持管理に機械類を多く使うため、ジムさんの機械系の技術スキルは大きな武器になっている。2014年11月末、マサチューセッツ州はシーズン初の大雪に見舞われた。TTORでは多くの除雪機が必要になったが、そのうちの何台かは故障していた。そこでジムさんが故障箇所を調べて必要な部品を専門店で購入し、半日で直してしまった。これには彼の上司も驚き、大いに感謝したという。

地域の造園でボランティアと一緒に作業するジムさん(左)
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上司のジェイスン・ヒルさんはこう話す。
「技術スキルと人的スキル、マネジメントスキルを兼ね備えたジムはわれわれにとって大きな財産です。彼のような人材を提供してくれたインテルやアンコアには深く感謝しています」。

ジムさんは2014年12月で実習期間を終えるが、2015年1月からパートタイムのスタッフとして働くことがすでに決まっている。彼は、「美しい自然公園や庭園、歴史的建造物などを人々がいつまでも楽しめように維持管理していく仕事に喜びを覚えると同時に、大きな責任も感じます。新しい人生の目的を見つけた気がします」と話す。

シニア世代の経験が社会問題の解決に役立つ

EFPの利用者は5年前に10人だったが、2014年11月現在で計500人に達した。クリスティさんやジムさんの他にも、貧困地域の子どもたちの学習支援と非行防止活動を行う元企業重役、ホームレスの支援活動を行う元IT企業マネジャー、貧困者の医療支援を行う元ヘッドハンターなどさまざまな人がいる。

EFP利用者の実習期間の給料はNPOや元雇用者が負担したり、第三者の財団・慈善団体などが負担したり、あるいはこの3つの組み合わせだったりと個々のケースで異なる。クリスティさんの場合はNPOのRAFTが負担し、ジムさんの場合は元雇用者のインテルが負担した。つまり、EFPはいろいろな個人や団体の協力で成り立っているということである。

米国では50歳以上の人の約7割はリタイア後も働きたいと考え、約5割は仕事を通して社会に貢献したいと考えているという。このような中で、個々の経験やスキルを活かして社会に役立つ仕事がしたいという人たちを支援するEFPは非常に貴重だ。

メットライフ財団とアンコアの共同調査によれば、55歳以上の人たちの能力と経験は重大な社会問題の解決に役立ち、同時に教育、医療、環境経済などの分野の労働力不足の解消にも役立つという。まさに一挙両得なのである。

ボランティアの人たちと(右端がジムさん、左端がジェイスン・ヒルさん)