視覚障害者にとっての働く意味

CCIは2009年にリーマンショックの影響で倒産した。その後、ウィリアムスさんは視覚障害者の自立支援を行うNPO団体「Lighthouse for the Blind and Visually Impaired」(LBVI)で、就職支援担当マネジャーとして働くことになった。LBVIはサンフランシスコで100年以上にわたり、視覚障害者に様々な自立支援を行ってきた有名な団体だが、就職支援に力を入れるために彼女を雇ったのである。

ウィリアムスさんは視覚障害者としての経験や人材斡旋のスキルなどを踏まえて、独自の視覚障害者向け就職支援プログラムを作った。このプログラムでは全く働いた経験のない視覚障害者のことも踏まえて、履歴書の書き方から面接の受け方まで徹底的に指導する。例えば、面接時に健常者は面接官とのアイコンタクトを通して信頼感を得られたりするが、視覚障害者はそれができない。だから面接官の話に時々頷いたりすることで、会話をスムーズに進めることができると助言する。

また、視覚障害者は視線を下に向ける傾向があるが、それでは自信なさそうに見えるので顔をあげてまっすぐ前を見るように促す。さらにあまり深刻にならない程度に自分の障害について説明し、障害があっても仕事には差し支えないこと、どうしても働きたいという強い意志と情熱があることなどを面接官に伝えるように助言する。

実際、視覚障害者が仕事を見つけるのは大変なことだが、LBVIのプログラムはかなり良い成果を上げている。2011年から2014年の3年間で150人の支援をしたが、そのうち60人(40%)が就職できた。しかも多くはサンフランシスコ市役所や連邦政府、大手企業など安定した仕事に就いている。

LBVIの応募者の多くはATを学び、パソコンを使いこなせるので、健常者と同じ職場で働くことを目指している。大手航空機メーカーの部品設計デザイン部門に就職した中年男性は視覚と聴覚の障害を抱えているが、ブレール式点字変換のパソコンを使って仕事をしているという。また、連邦労働省の契約遵守局に就職した20代女性は大学を卒業後に失明したが、杖の使い方やATなどを学んで大学院に入り、法学修士号を取得した。それから3年半も就職活動をして、大学院で学んだ法学知識を活かせる仕事に就いた。

視覚障害者の失業率は55%~75%と非常に高いが、ウィリアムスさんはその数字を下げることを目標の1つにしていると話す。 「私たちの支援で就職した人の多くは働くことに大きな喜びを感じています。勤務態度も真面目で離職率が低く、信頼される従業員になっています。雇用者が真面目な視覚障害者を雇うことは大きな利益になると認識すれば、もっと積極的に雇うようになるでしょう」。

LBVIのプログラムで就職した40人は、合計すると年間160万ドル分(約1億9200万円)の給料を得ている。彼らは経済的に自立し、障害者手当を受け取る必要がなくなり、結果的に税金の節約にもつながっている。

「でも、それだけではありません」とウィリアムスさんは続ける。「自分で働いたお金で生活するという健常者にとっては当たり前のことが、視覚障害者にとっては初めてというケースは少なくありません。安定した職場で幸せに働くことで、社会の一員として生きている実感が持てるのです。それは彼らの人生において大きな変化であり、すばらしいことだと思います」。

ウィリアムスさんは就職支援を通し、視覚障害者の人生に希望の灯をともす手助けをしている。その活動が高く評価されて、社会にインパクトを与えた高齢者に贈られる「パーパス・プライズ賞2014年」(前回のコラムで紹介)を受賞した。

彼女は受賞の喜びと共にこう語った。
「私はいま72歳ですが、80歳、90歳になっても元気な限りは働き続けたい。経済的な理由だけでなく、いつまでも他の人の役に立ちたいと思うからです。他の視覚障害者に希望を与えることで私自身も大きな喜びが得られる、こんな楽しい仕事を年齢だけを理由に辞める必要はないと思います」。