誰にも看取られずにひとりで亡くなった人を弔う、民生係の男性を主人公にした英国映画『おみおくりの作法』が、日本で反響を呼んでいる。仕事の枠を越えて死者と誠実に向き合い、故人のために弔辞まで書こうとする男性の姿には心を打たれる。私はこの映画を観て、孤立死した人たちに人間的な尊厳を与えようと追悼メモリアルを行う米国の団体のことを思い出した。ひとりで死ぬとはどういうことか、死者に想いはあるのか、尊厳ある孤立死とは…などについて考えてみよう。

孤立死を生み出す社会

この映画の原題は「Still Life」だが、日本語にすると「静かな生活」というような意味だ。社会の片隅で静かに暮らす人たちが、誰にも看取られずに孤立死する。その人たちの葬儀を執り行うのもまた、静かにひとり暮らしを続ける中年男性である。

ロンドン南部に住むジョン・メイ(44歳)は22年間、地区の民生係として働いている。地区内でひとり暮らしの人が亡くなると、身寄りがないかを調べ、見つからなければ自分で葬儀を行う。

孤立死した人の部屋から手がかりを探し、故人のために葬儀で流す音楽を選び、弔辞の内容まで考える。故人が生前どんな生活をしていたのかについていろいろ調べ、時には故人を知る人に会ったりして、それらをもとに故人に合った弔辞を書いてひとりで読み上げるのである。

このような死者の想いを大切にした葬儀を行うには経費がかかる。そのため、以前から「死者に想いなど存在しない。火葬で簡単に済ませれば良いではないか」と考えていた上司は、ジョンを人員整理の対象にする。役所の経費を減らすためには、孤立死した人の想いや尊厳など考えていられないということだ。

ジョンに解雇を言い渡す時の上司の言葉が非常に嫌らしい。「We’re letting you go.」と言うのだが、「let ~ go」とは「放っておく」「そのままにする」という意味である。これだとジョンが自ら退職を申し出て、上司は「引き止めない」という意味になってしまう。

ジョンは仕事に誇りを持っており、退職を申し出ることなどあり得ない。にもかかわらず、上司にこのような狡猾な物言いをさせた所に監督の意図が込められているように私は感じた。つまり、彼の上司を嫌らしく狡猾に描くことで、孤立死を生み出している現代社会の冷たさや人間関係の希薄さなどに疑問を投げかけようとしたのではないかということだ。

孤立死した人たちのために追悼メモリアルを始めたチャールス・エングルスタイン氏
孤立死した人たちのために追悼メモリアルを始めたチャールス・エングルスタイン氏