次世代医療基盤法の成立以降、ありがたいことに認定匿名加工の準備団体ともいえる医療者、学会、商用データベース会社、ITベンダーの方が私ー 日薬連、製薬協のような団体の代表者としての立ち位置であったり、単に個人としてであったりー の元をこれまでにも増して頻繁に訪ねてきてくださるようになった。

「仮に医療DBを構築するとして」、どの程度のデータ量が必要なのか、どのあたりの医療機関や疾患領域のデータにニーズがあるのか、項目には何が欲しいのか等。製薬産業には創薬のフェーズから私の所属する、医薬品発売後の安全性監視活動(ファーマコビジランス)に至るまで多種多様な業態があるので、その全てのニーズを私が十分理解しているわけではないのだが、およそ医薬品の開発段階から発売後のいわば「アフターサービス」に至るまで、どのようなニーズがあるのかを私のわかる範囲で広くお伝えするようにしている。

こうした問い合わせの増加を踏まえ、今回は医療DBには一体何が求められているのかを整理してみたいと思う。もちろん、様々な利用候補者が想定されるわけで、細かいレベルでの整理は後の機会とし、あくまで普段お話しているような最大多数的な共有の視点を取り上げる。

データベース(DB)化する、ということ

まずは散在している医療データをどのようにDB化するのかという話だ。DBという用語を正しく定義するには枚挙にいとまがなさそうだが、ここでは「利用しやすいように工夫がなされた電子データの集まり」としておこう。その上で利用可能性の高いDBのポイントといっても、まずはそれを何に使うのかにもよることだろう。もし読者の皆さんが医療従事者であって、国際的にも認めてもらえるような研究をやりたいというのではないならば、DB化する上ではご自身や周囲のスタッフが入力した情報を検索したり、リスト表示したり、グラフ描写するといったような便利機能がDB化する上での最重要ポイントになるだろう。

一方で、社会学分野の研究者で、医療への満足度の本音を調べたいというのであれば、案外と医療現場から出てくる情報を綺麗にDB化したものよりも、Web、SNSなどをソースとした「つぶやき」情報からキーワードを使って検索、累積させて作ったDBの方がニーズに見合う。要求は多様であり、ご自身と周囲が合意したからといってそれが必ずしも社会全体の医療データへのニーズを満たしているとは限らないことには注意が必要だ。むしろそれはビジネス機会という面では望ましいことでもあり、センス良く社会的ニーズを的確に捉えることができれば唯一無二の世界的にも賞賛されるDBを、誰もが構築できるチャンスがあるという見方もある。

一方、そのDBを自身や限られた人たちだけの財産とするという戦略もなくはない。Google社は検索エンジンの提供開始当時より、世界中の顧客が打ち込んだ検索ワードを全てDB化していると聞くが、これはアクセスできない我々としては無価値であっても、Google社にしてみれば競争優位の源泉であり、合理的だろう。無論、本コラムの趣旨はあくまで「より多くの研究者に利用してもらう上で」整理するのが趣旨であり、その前提で求められるポイントをいくつか挙げてみよう。