医療データの2次的な利用。本コラムの主たるテーマでもあるのだが、「2次的な利用」という表現は案外と定義がぼやけているようだ。メディアの方から伺ったところ、「マスコミは一貫して、2次的な利用と言ったらデータの所有者ではない人が使うという意味だ」そうで、データの所有者がその利用目的に関わらず利用することの全ては、いわば1次利用ということになる。

一方で、私や周囲の医学系研究者の共通認識は「主たる目的で使う場合が1次利用。そうでない場合が2次的な利用」で一貫しているように感じられる。さらには、先日聴講したシンポジウムでは登壇された行政の方が「より便利に使うのが2次、構造化して医療DB化してからの分析的利用を3次利用としたい」旨をお話されていたこともあり、少なくとも明確に定義化されているわけではないのだなと改めて感じた。

今回は医療データを主たる目的の他にどのように使うのか、どのような使い道があるのか、主だった利用候補者の立ち位置別に整理してみたい。その際に用いる1次、2次という言葉については「主たる目的で使う場合が1次、そうでないのが2次」の意味で使わせていただくことをご容赦願いたい。

医療従事者

前回のコラムでは、SNSや冷蔵庫の開け閉めまで医療データ周辺のデータとして広く捉えたが、医療データのコアはやはり医療現場由来の電子カルテや保険請求データであろう。こうしたデータを元々電子的に生み出しているのは医療従事者であり、2次的な利用のニーズがあるのは当然だ。

一方で、医療データを本来の目的とは異なる使い方に否定的な意見も、医療従事者やその経験者の方に多いような印象がある。これはどうしてなのだろう。IT専門家からは「日本の電子カルテは大きなワープロでしかない」という声も聞こえてくる。2次利用を想定したような構造の標準化やコード化などが配慮されていないどころか、入力規制がほとんどなく、多くの項目が空欄のままで良いといった仕様の電子カルテシステムもあるらしい。

保険請求上の病名と実病名の不一致の問題もよく知られている。なるほど、こうした実態を肌感覚でご存じの医師らが2次的な利用にアンチというのも頷ける。こうした利活用の困難さとその克服については、いずれまた本コラムの中で触れたいと思う。

さて、医療従事者の2次的な利用目的を考えるならば「どの治療がベストか」、多種多様な背景をもつ多種多様な容態の患者さんに対して、治療の最適解やそのヒントを得るための利用目的がほとんどではないだろうか。「手術するかしないか」「A薬にするかB薬にするか」「薬剤の用量を減らすべきだろうか」等々。日々の診療から沸き上がる疑問のことを疫学研究の分野では「クリニカル・クエスチョン」と呼称するが、これを調べられる形に翻訳した「リサーチ・クエスチョン」に則って医療データを用いるといった利用の仕方だ。

もっとも、利用とはいっても「同じような患者さんが過去にいただろうか」といった単なる検索から、患者背景をマッチングする等、疫学本格的な処理方法を用いたコホート研究まで様々であろうし、得られる結果の満足レベルに関しても「少しは参考になった」から、「強い確信を得られた」まで様々なことであろう。