地域との情報共有についてはいかがですか。

蝶名林氏 いくら回復しても在宅での受け皿が整っていなければ帰宅できませんし、経営のためには新たな入院患者の紹介を受けることも必要です。そのため、地域のケアマネジャーとの関係作りにも注力しています。

ケアマネジャーの情報交換会には、看護師やメディカルソーシャルワーカー(MSW)だけでなく、院長である私も出席し、顔の見える関係作りをした上で、当院の特徴や何ができるかを説明します。41床規模であっても、常勤医が4人おり、常勤換算で20人を超える看護師もいて、しっかりとした病院機能を持っている強みをアピールします。また、地域の医師会の先生方や聖路加国際病院のOBの医師や看護師の方々にも、地域包括ケア病床についての話をすることで、「何をしている病院なのか」をしっかり理解してもらいます。

患者さんの受け入れや在宅復帰のための工夫については。

蝶名林氏 入院を希望される患者さんがしっかり回復し、在宅復帰できるかどうかを見極めることも必要です。そのため、医師、看護師、リハビリスタッフ、薬剤師、栄養士などによる多職種チームで入院希望の患者さんの診療情報提供書を見ながら病状や使用薬剤を把握したうえで、リハビリの効果が期待できるかどうかなどを最初に評価します。続いて「welcomeカンファレンス」として家族とも面談し、患者さんの入院の目的やゴール設定について話し合います。

また、入院後も、PT、OT、看護師などで身体機能評価に基づいた適切な介助法などをカンファレンスで初期評価し、情報共有します。その後は中間カンファレンスを実施。多職種によるカンファレンスで、余暇活動を含めた患者さんの望む生活の実現に向けてのサポート方法や、支援の調整を行っています。さらに、退院前には自宅環境を確認するとともに、「退院前カンファレンス」を行います。そこでは患者さん、家族、ケアマネジャーなどと、退院に向けての最終調整を行います。その際には病院の多職種スタッフに加え、地域のステークホルダーの参加も募るとともに、家族への受け入れ準備についての“教育”も行います。

こうした取り組みも奏功し、前述したように平均在院日数は約1カ月余りと短く、2018年12月現在の在宅復帰率(有料老人施設を含む)は96.9%でした。その76%が自宅、19%が居宅系施設に戻っており、要介護度4の患者さんが在宅復帰するケースも少なくありません。

順調に推移されているようですが、今後の課題は。

蝶名林氏 地域包括ケア病棟(病床)は、2014年の診療報酬改定での新設以来、様々な加算などで評価されてきました。しかし、十分なリハビリテーションを行うには、さらなるリハビリスタッフの増員が必要です。医師や看護師の確保にも苦慮しており、経営的にはまだまだ厳しい面があります。

経営を安定化させるためには、外来への注力も必要だと考えています。地域に若い家族世帯の住民が多いことから、外来では小児科始めています。現在は1日の総外来患者数は50〜60人ですが、それを100人に伸ばしたいですね。

また、在宅復帰支援のため、これまで医師一人が週に1回午後のみ訪問診療を行っていましたが、昨年9月からは医師をもう一人増やし、月に20〜30人の訪問診療を行う予定です。また、既に4月からは、院内に訪問看護ステーションも設置し、連携を取りつつ退院患者さんのサポートをしています。将来的にはPT、OTをさらに確保し、外来や訪問リハビリテーションも実践したいと思っています。

まずは、一般の人のみならず、急性期医療に携わる医療関係者に、地域包括ケア病棟の実際をもっと知ってもらいたいですね。

蝶名林 直彦(ちょうなばやし なおひこ)氏
聖カタリナ病院 院長
1976年神戸大学医学部卒業。虎ノ門病院内科病棟医を経て、呼吸器内科医長。1988年より東京女子医科大学第1内科講座で学位取得。1990年、聖路加国際病内科医長。同院内科統括部長、呼吸器センター長などを経て、2018年より現職。日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会診療報酬適正化委員会顧問、内科系学会社会保険連合(内保連)副理事長。