近年、進展がめざましい医療革命の一つである「再生医療」について、神戸医療産業都市推進機構の医療イノベーション推進センター長、福島雅典氏が講演した。同機構は、産官学医を結び新しい医療の未来を拓くため、2018年4月に新たに改組した組織。医療イノベーション推進センターの取り組みについて紹介するとともに、再生医療の現状と今後の課題についての福島氏の講演をリポートする。

再生医療の第一ラウンドは終わった

 神戸医療産業都市推進機構、医療イノベーション推進センター(TRI)(旧、臨床研究情報センター)は、我が国のアカデミアにおける初めてのデータセンター・解析センターとして、2003年に文部科学省と神戸市によって創設されました。すべての医師や研究者が、いつでも利用できる全国に開かれた公的機関として、臨床試験の企画から運営、論文執筆、アカデミアシーズの企業との協業、グローバル展開などを一貫して支援しています。

 我々が目指すゴールは、あらゆる疾病の制圧にあります。そのために、最もコストが低く、最も低コストで、早く、負担の少ない方法を探っています。そのための核となるのが、「橋渡し研究」だと考えています。橋渡し研究は、医学や生物学などの基礎研究の成果から、有望な知見を選び出し、結びつけるもの。それをいかに早く「first in human」に持っていくかが重要です。これからの個別化医療の時代においては、対象者が少なくても開発医薬がマッチする患者さんを選び出し、早期にfirst in humanを行うべきだと考えています。

 また、もう一つ重要なのが、薬の市販後調査です。「real world data」は流行り言葉になっていますが、市販後調査でしっかりデータをとり、それをAI(人工知能)で解析し、フィードバックする時代になってきました。これを踏まえ、TRIでは2年を目処にヘルスデータサイエンスセンターを始動したいと考えています。

 TRIでは、様々な研究を支援。承認を受けたものも出てきています。例えば、その一つが声帯再生のためチタンブリッジ(内転型痙攣性発声障害治療用医療機器チタンブリッジ)で、これは「先駆け審査指定医療機器」の第1号になりました。また、脳神経・骨髄再生領域においては、札幌医科大学神経再生医療科の本望修教授らが開発した「脊髄損傷の治療に用いる自己骨髄間葉系幹細胞」ステミラック注についてもTRIが支援しています。再生医療についていえば、すでに第一ラウンドは終わっています。これを可能にしたのが、文部科学省のトランスレーショナル・リサーチへの投資という大決断であり、TRIの使命でした。