次々と生まれる新たなイノベーション

 TRIの役割は、開発方針策定、特許戦略、引き継ぎ企業の探索・仲介(リエゾン)、ARO(academic research organization)の構築支援、臨床試験から承認へのプロセス、グローバル展開など、様々な相談を受けることです (https://www.tri-kobe.org/support/consultantion.html)。

 アカデミアのみならず、企業からも研究相談があり、次々と新たなイノベーションが生まれています。これまでの研究相談実施件数は679件(2009年~2019年3月29日)。研究支援件数も399件(開所~2019年3月29日)で、うち274報が論文掲載になっています。さらに、AMED(日本医療研究開発機構)の革新的医療技術創出拠点プロジェクトによるR&Dパイプラインは、1260シーズ以上で、治験開始数は120件以上(2017年2月時点)、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)下での承認・認証取得も26製品(2017年8月時点)に上ります。つまり、再生医療は既にハーベストの時期に入っているわけです。製薬企業の方とお話ししていると、「医師主導治験を行っても、その後企業で治験をやり直さなければならないので時間がかかる」と言われますが、それは間違いです。前述のチタンブリッジも、ロボットスーツHALも、医師主導治験だけで承認までいきました。

 最近では、Natureと組み、「TRI Advances」というホームページを開設 (https://advances.tri-kobe.org)。研究のハイライトを紹介。研究内容を世界へ発信することにも力を入れています。

再生医療の柱は「幹細胞医学革命」

 再生医療を理解するには、「幹細胞医学革命」を知る必要があります。幹細胞医学とは、自然治癒力の本体を利用する新しい医療のこと。ほとんどの疾病は、再生修復ホメオスタシスに障害があるために起こると考えれば、自然治癒力を修復する幹細胞医学で難治性疾患の大半に適応できることになります。

 体は本来自然治癒力をもっており、それを担う細胞が潜在的にあります。それが幹細胞です。幹細胞は、常に血中に存在し、身体中を循環し、細胞のターンオーバーや修復、再生にあたっています。一方、損傷が大きく動員される幹細胞で足りない場合には、体外で幹細胞を培養増幅して戻すことで修復再生に必要な細胞を提供できます。欠損巾が大きい場合には、足場(scaffold)が必要な場合もあります。

 こうした再生医療に関する原理に則り、現在様々な研究が進められています。後で詳述しますが、例えば神経再生領域では、2016年2月に「脊髄損傷の治療に用いる自己骨髄間葉系幹細胞」が先駆け審査指定を受け、2018年12月承認されました。また、北野病院の金丸眞一氏らの鼓膜再生に関する研究は、2018年9月に承認申請。TRI医療開発研究所の川本篤彦所長らはCD34陽性末梢血幹細胞による重症下肢虚血治療を治験中。神戸大学の黒田良祐教授らはCD34陽性末梢血幹細胞とアテロコラーゲンによる難治性骨折の骨再生を治験中。京都府立医科大学の外園知恵教授らは口腔粘膜細胞シートによる角膜再生を治験中です。

 こうした研究成果が出てくる背景には、AMEDの橋渡し研究支援推進プログラム募集要項が厳しく、薬事法に基づく試験、GMPに基づく製造が求められていることにあります。つまり、橋渡し研究ではPMDA(医薬品医療聞き総合機構)に提出できるレベルの研究成果が必要だからこそ、承認への近道なのです。従来のように臨床研究をいくら繰り返しても承認にはつながりません。グローバルスタンダードである治験を行う必要があります。