こうしたことを踏まえ、今後の日本の医療を変えるためのキーワードが4つあると考えています。

その一つは「創薬革命」です。かつて薬は有機化学者が合成した化合物から様々な分析をした上で動物実験、臨床試験をして創っていましたが、最近では、抗体医薬、核酸医薬など、新たなコンセプトの薬の開発がさかんに行われています。ここで必要になるのも「インベンション=発明」です。

日本の製薬企業では、イノベーションという言葉の下、1990年代から自社の中央研究所を次々に閉鎖する流れがあることも懸念材料です。

イノベーションは、既存の技術を組み合わせて大きな価値を生み出すことです。しかし、それは「インベンション」ではありません。私は、最近の医薬品開発においては、イノベーションではなく、インベンションでしか新たなものが出てこないと考えています。それを実現するには、企業の研究者がしっかり創造的な研究をすることが大切です。他者からの技術を導入するにしても、中身を理解できる人材がいない限り、新たな展望は生まれないからです。

2つ目は、「医療機器革命」です。昨今では、ライフサイエンス、メカトロニクス、インフォマティクスなど、様々な分野の交流が進んでおり、医療機器開発での大きな展望が期待できると思っています。ここでの課題は、個々の多様性の課題にいかに対応するかでしょう。

3つ目は「医療情報革命」です。医療機関のほとんどで電子カルテが導入され、医療情報のデジタル化が図られています。しかし、せっかくの医療データも、統一したデータベースとして活用できないという大きな課題があります。今後、情報科学の発展とともに、医療ビッグデータを利活用するための革命が起こることを期待しています。それが実現すれば、医療に大きな風穴をあけてくれるでしょう。

4つ目は「医療マネジメント革命」です。これからの高齢化社会における医療費の高騰は、国民皆保険制度そのものを根底から覆すことにもなりかねません。それを防ぐには、いかに適材適所に医療費を投入できるかです。現状では、本来使わなくてもよい医療費が無駄に使われ、もっと使わなければならないところにお金が投入されていないと考えています。最も重要なのは予防です。今後はそちらへのシフトを図る必要があるでしょう。

医療革命は待ったなしです。迫り来る人口減少社会、高齢化社会の日本の中で、国民が活力を取り戻すためにも、4つの医療革命に注力していくことが必要だと考えています。