皆保険である日本の強みを生かしたシステムを

一方、皆保険である日本の強みもあります。皆保険だから何万人、何十万人という人のゲノム検査の情報と臨床情報を集めて、大きなデータセンターを作ってそれを利活用するようなことが日本だからできるわけですね。

いまから3年前、日本はどのようなインフラを作って「がんのゲノム医療」を行うべきかを議論するために、「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」が開催されました。そこで提案されたことは2つあります。

一つは「がんゲノム医療」の中核拠点病院というのを整備することでしたが、もう1つのことは「せっかく日本は皆保険でやるのだからそのデータを集めて、皆が使えるようなデータセンターを作ろう」と言うことになりました。そこでは日本中のがんゲノム医療を支援すること、それから得られたデータを共有すること、それから得られたデータに基づいた開発研究や臨床試験を促進すること、それからやがてきたるべき全ゲノム解析の医療応用に向けた検討や人材育成をすること、というのがC-CATの役割として提言されました。

「C-CAT」には中核拠点病院や連携病院からゲノムデータだけではなくて、薬が効いたか・効かなかったのか、それから重篤な副作用が出たかという情報がC-CATに送られてきます。つまり、C-CATにはこの薬の有効性や副作用情報という、製薬会社がもっとも知りたい情報と、そのゲノム検査の情報そのものがリンクしたデータが、やがて何万、何十万、おそらく百万人を超えるようなデータベースがC-CATに作られていくわけです。このような国は世界にはありません。日本は「がんゲノム医療」に関しておそらく世界トップの国になると思います。

AI(人工知能)を使って膨大な情報を集積

今後「C-CAT」に構築されるデータベースは、非常に革新的なもので、日本のがん医療の進歩を加速することにつながると思います。例えば、国内の臨床試験のためのデータベースを最新のものにするために、臨床腫瘍医の精鋭を集めたキュレーターチームを作ってもらり、データベースを最新のものにバージョンアップしていますので、おそらくこれが日本でいちばんいい臨床試験のデータベースとなります。

それだけではなくて、世界中で発信される遺伝子変異に関する情報を、ものすごい量の論文から引っ張ってきてこの中に入れています。そこに人工知能が必要なわけで、自然言語処理を使ってデータベースを吸い上げ、最後は精鋭部隊によるキュレーションを経た後のデータが格納されていきます。いわばがん医療に関する知恵の全てを融合したCKDB(Cancer Knowledge DataBase)というのを「C-CAT」のなかに構築するのです。

また、日本は皆保険の仕組みを守るために仕方ない部分もありますが、患者さんに使える抗がん剤の数が米国と比べると少ない。例えば、ALK融合は大腸がんでも膵臓がん見つかることがありますが、クリゾチニブが保険で使えるのは、日本では肺がん患者さんだけです。せっかく中核拠点病院、連携病院、「C-CAT」というネットワークを作ったのですから、患者さんが使える薬の数を最大化したいというように考えています。

例えば、このネットワークにおいては施設限定の適応外使用を認めよう、あるいは施設限定の早期承認を認めようという方法もあります。また、患者申出療養制度などを使い速やかに薬が承認される仕組みを厚生労働省やPMDAと一緒になって作ろうと思います。