京都大学病院ではBIC Projectでバイオリソースを利活用

まずは、京都大学病院で行っている「BIC Project(Biobank and Informatics for Cancer)」について紹介します。

BIC Projectは、がん治療を受ける患者さんの詳細な臨床情報と、検体(生体試料)に含まれる様々な生物学的情報を経時的に集め、総合的に解析することで、個々の症例にあった「より効果的」で「より副作用が少ない」治療法の開発を目指すものです。


創薬や予防、早期発見などの革新的がん個別化医療のための情報を進めるだけでなく、それを利活用することが最大の目的です。

検体採取から保管、研究への利用の流れは次の通りです。採取した生体試料はすべて薬剤部に送られ、そこでDNA抽出や血漿分離などを行い、バンクスタッフが検体IDや試料IDリストを作成。匿名化した上で臨床情報と紐付け可能な形にします。

検体は京大病院内で一時保管された後、外部の検体保管施設で超低温フリーザーもしくは液体窒素で保管。研究などの必要に応じてそこから生体試料の受け渡しをします。


生体試料の採取に当たっては、インフォームドコンセントは欠かせません。

当院では、最初の段階で患者さんに継続的にサンプルを採取すること、それを研究に使用すること(front-door consent、Opt-in)、すべてのゲノム解析、たんぱく質解析、臨床情報との関連を調べる研究などに利用すること、その際には京大病院だけでなく国内外のアカデミアや民間企業との共同研究でも使用する可能性があることを説明し、同意を得ています。

その際には京都大学の倫理委員会に承認された研究のみに使うこととしています。


2013年9月〜2019年2月末までにこれに同意してもらった症例は3627件で、同意取得率は96.1%。患者さんは、自分がかかった病気をなんとかしてほしいという思いが強いことが高い同意取得率につながっていると考えられます。

BICの利用率は28.1%に上り、ただ蓄積されているデータではないことを示しています。今後はこれを50%以上に上げることが目標です。


京都大学には別の強みもります。BIC Projectと同様に同意を得た先制医療・生活習慣病研究センターの健診の際の血液サンプルやMRI画像などがあり(同意取得率99.2%、計1120人分)、こうした健常者の試料がリファレンスデータとして使えることです。

生体試料を研究に使う際には、品質保証が求められます。BIC Projectでは採取方法、搬送方法、分離方法、保存方法が記録され、品質に関して外部認証を受けています。


さらにこれらのデータを活用するため、京大病院ではバイオリソースをその場で研究できるラボを持つ病棟をオープンさせる予定です。国内大手7社の民間企業の協賛金を得て、KBBM(Kyoto Bridge for Breakthrough Medecine)という社団法人を立ち上げ、バイオリソース活用を図る計画です。


ちなみに、京大病院では2015年から、がん患者さんを対象にがん関連遺伝子を調べ、適合する治療薬候補の情報を提供するクリニカルシークエンスサービス「OncoPrime」も始めました。これは、三井情報と理研ジェネシス、シスメックスとの共同事業です。