「健康経営」で地域包括ケアのサポートと
新産業創出を目指す

■基調講演②
「次世代ヘルスケア産業の創出-健康経営と地方創生の視点-」
経済産業省商務情報政策局 局長 富田健介氏

健康寿命が長いことと、経済社会が活力を維持することは両立すべきことであり、その道を探ることが国の政策の方向性だ。具体的な方策は、食事指導サービスやフィットネスクラブなど、公的保険外の予防・健康管理サービス産業の育成で、こうした事業を積極的に育成することで、生活習慣病などの慢性化・重症化を予防し、医療費の適正化が図れ、また、これらの新しい産業を地域で育てていくことが、地域創生につながる。さらに農業や観光業など、他の産業と連携することで、地域に特色ある新しい産業が生まれる。つまり、公的保険外の予防・健康管理サービス産業を創出することで、地域包括ケアのサポートと新産業の創出を実現できることから、政策もこの2つをにらみながら進めていく。

高齢化社会を活力あるものにしていくためには、定年後も可能な限り経済活動に参加できる仕組みが求められる。働き方や人と人とのつながりも含めた、新しい社会のあり方については、今後の課題として取り組んでいく。

健康寿命を延伸することと経済の活性化は車の両輪であることから、日本再興戦略にもヘルスケアを織り込んでいる。
成長戦略におけるさまざまな政策を検討する場として、平成25年12月に「健康・医療戦略推進本部」内に「次世代ヘルスケア産業協議会」を設置した。

協議会では、ヘルスケア産業を企業や健保組合などによる健康投資の促進(需要面)と、受け皿となる公的保険外のヘルスケアサービスの創出(供給面)から検討している。需要面は、投資対効果の見える化や健康経営に対するインセンティブなど、健康投資の促進につながる施策を検討している。一方、供給面では、人材や資金集めサービスの品質の見える化など、健康関連の新事業創出につながる施策を検討している。これらの施策を盛り込んだ「アクションプラン2015」は、「医療」「介護」「地方創生」の3つの柱でまとめられている。

まず、医療分野では、保険者機能を補完する健康経営を推進する。企業と保険者が車の両輪となり、本人や家族の健康推進に励むサポートをする。その1つが、健康経営銘柄の指定だ。これは、一部上場企業の健康経営の取り組みを促進する施策だが、中小企業の健康経営推進のサポートプランも用意している。

介護分野では、介護システムを補完・充実する保険外サービスの創出を目指す。混合介護は制度上可能だが、公的保険に基づくものと自費の介護を組み合わせるのは、やりにくいという声が現場にはあるため、そうしたグレーゾーンを解消するものを組み込んだ。

地域創生は、ヘルスケア産業の育成である。例えば、農業と結びついて、健康な農産品を地域から展開することを加速する。さらに、温泉や自然など地域の観光資源と健康をどう結び付けるかを検討する方針で、環境省や農水省と協力して進める。

このほか、次世代ヘルスケア産業協議会の地域版も各地に作っていく予定で、本年中に10都道府県で立ちあがる見込みだ。農水省との連携では、農産品や食事に関するDBを構築し、食産業のインフラとして活用する。観光庁とは、ヘルスツーリズムのサービス品質の認証スキームを構築している。金融庁や地域活性化支援機構(REVIC)と官民ファンドを作り、資金供給を図る。さらに、地域版協議会の中にサービスの実証の場を整備する予定だ。

地域の目線で考えると、新産業創出にはさまざまな段階がある。ビジネスの創成期から実証期、立ち上げ期の各段階にある課題に合わせて、さまざまなサポートを使ってもらい、2020年までに地域発100新事業を創出する「地域ヘルスケアビジネスイノベーションハイウェイ構想」(HiHi構想)を掲げている。

最後に、健康経営に関する取り組みを紹介する。企業が経営理念に基づいて、従業員の健康保持・増進に取り組むことは、従業員の活力向上や生産性の向上など、組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や組織としての価値向上につながることが期待される。ただし、現状は、保険指導にまで活動が拡がっていないため、企業と組合が連携して健康への取り組みを全社的に拡大していくことが重要だ。厚労省はデータヘルスケアの取り組みを促進しているので、経産省は企業経営者に向けた政策の後押しをする方針で、その1つとして、健康経営銘柄を設定した。

これは、経営理念、組織体制、制度・仕組み、評価改善が行われているかなど、いくつかのポイントから、22業種22社を健康経営銘柄として指定するものだ。銘柄指定された企業は、他より高い株価水準を維持しており、健康経営を行っている企業が市場でも評価されている。

健康経営銘柄は大企業に対する取り組みだが、中小企業へのアプローチも準備している。中小企業は、予算や人材などリソースに限りがあり、また、取り組み方がわからないという声もあるので、健康経営のマニュアルやアドバイザー制度を設けるほか、税制金利の優遇等のインセンティブも用意する方針だ。

第1回終わり(第2回に続く)