不整脈カテーテル・アブレーションの分野において、全国の大学でトップクラスの症例数と治療成績を有する筑波大学医学医療系循環器内科教室。高度な手技を実践できる数多くのスタッフを揃え、新たなアブレーション法を開発するなど、専門的な治療体制を確立している。特に難治性不整脈では年間400例以上を完治させ、埋め込み型デバイス治療では年間150例以上の実績を持つ。

 その筑波大学医学医療系循環器内科教室を2006年から率いてきた教授の青沼和隆氏は、同大学の21に及ぶ各関連病院と共に、教育や研究をテーマに対話を重ね、より良い関係構築を模索してきた。青沼氏は「異なる要素の調和」を目標に掲げ、大学病院の連携や地域医療のあり方など、異なる要素の協調と融合に尽力している。

 連載4回の第2回は、筑波大学医学医療系循環器内科学教授の青沼氏に、循環器領域での専門医制度のあり方、医師に求められる能力などについてお話を伺った

循環器領域は幅広く奥深い
臨床研修制度の期間を長く設定

青沼先生はゼネラルフィジシャンの存在感が増してきていると言われました。

青沼 これは世界的な流れです。米国では1980年代に臓器別に行き過ぎ、1990年後半頃からはGP(General Practitioner)が一番儲かるといわれて、みんなGPになりました。そうなると今度はスペシャリストの給料を上げなければならず、ますます医療費が上がるという悪循環が起こった。こうした流れがあるから引き戻すのでしょうが、最初から臓器別で学ぶのではなく、人間を診ることができる医者になって欲しいと願っています。

若い人は早く1人前になりたい、特殊能力を身に付けたい、尖りたいと思っていますが、早く尖ってしまうと人間としての幅がなくなります。人間の幅も学問の幅も同じで、幅がない人間がいくら尖っても、その限界はすぐに見えてきます。医師として必要なのは、技術と共にコミュニケーション能力や思考能力など、人間としての深みです。まず自由闊達な行き来ができるカーディアックサイロの中で循環器全領域を学び、そこで一人前になってからその中で専門領域を究めていく方が人間としての総合力が身につきます。

特に循環器内科では、新しい臨床研修医制度ができたことで研修期間が長くなりました。現行の制度でも、日本循環器学会に所属してから6年間は専門医研修としての経験が求められます。総合診療専門医は3年、麻酔専門医、脳外科専門医は4年で取得できますが、循環器内科では認定期間が長く設定されています。これは、先人の先生方が循環器領域は幅が広く、様々な能力が必要だと予見されていたからだと思います。

そうした方針は専門医制度にもあらわれていますか。

青沼 専門医制度では内科学会専門医を取得した後に、循環器学会専門医、消化器学会専門医を取得できるよう循環器学会を2階建てとし、その上でさらに不整脈専門医を取得できるようになっています。特に不整脈専門医ではまず内科全般を学び、その上で循環器専門領域を勉強し、ある程度これらの分野を究めてから専門医を取得できるようにしたため、結構時間がかかります。

ただ、これは他学会の専門医制度とはかなり異なるため、3年で専門医を取って独り立ちしたいと思っている医師は、循環器には来なくなってしまいます。そこでいま国立循環器病研究センター理事長の小川久雄先生、広島大学循環器内科学教授の木原康樹先生などが中心になって、整合性を取りつつ専門医教育の環境づくりに取り組んでいます。

一方で、それでも循環器を選択してくる医学生たちを見ると、若い人も捨てたものではないと感心しています。