心不全の患者さんに不整脈が起こっても心不全の医師だけで診るというのでは、いずれ限界がきます。重要なのは、若い医師がどこにでもアクセスできることです。このようなシステムをつくることで若手医師がいつでも、どこでも常に専門家と接することができ、かつ最新で最良の医療を学ぶことができます。

一方、患者さん側からいえば、どこに行っても適切な治療が受けられることが大事で、私たち医師は最新、かつ最も重要な治療ができることが求められます。

青沼先生は筑波大学でそうした教育を実践されていらっしゃると伺いました。

青沼 若い医師に対しては、垣根を超えた環境を整えて教育をしていますし、患者さんが来られたらみんなで協力して診ていますが、実際には多くの垣根があるのではないでしょうか。

私は医師になって東京医科歯科大学第二内科に入所し、武内重五郎先生という素晴らしい恩師に師事しました。その武内先生から教えられたのは「誰からも信頼される医師になること」です。昔は第1、第2、第3と分かれた大内科制、今で言うと総合内科が導入されており、その中で教育を受けた医師は、専門領域に進む前に主要臓器の基礎を学んだものです。私たちの時代に大内科に入った医師は、多かれ少なかれこうした教育を受けてきました。ただ、筑波大学では開学当初からアメリカの教育を採り入れた先進的な医学教育を行っています。

それはゼネラルフィジシャン的な教育ですか。

青沼 いまはほとんどの大学がそうですが、ゼネラルフィジシャン的教育、すなわち総合内科医的教育を行うと同時に、臨床研修の初期から循環器や呼吸器、消化器といった臓器別内科で学んでいきます。外科の分野でも胸部外科、さらに心血管外科と肺外科が分かれているなど、細分化されている領域は多数あります。東京医科歯科大学も少し前までは、上部消化管と下部消化管の外科教授がいたほどです。

細分化されることは、学会発表等で効率的に論文を書いたり、非常に先進的な研究を行うために集約されたもので、胃だけ、腸だけ、あるいは食道だけを診るようにならなければ、最先端の研究領域では世界と互していく上で通用しないのかもしれません。しかし、このような臓器別の医学が行き過ぎために、逆に現時点ではゼネラルフィジシャン(総合内科医)の存在感が増してきたとも考えられます。

第1回終わり(第2回に続く)