調査からわかったことはありますか。

小川 データを採ってみてわかったのは、日本では心筋梗塞、狭心症をはじめ、心不全が極めて多いことです。感覚的に心不全は多いと思っていたものの、今まではそれを裏付けるデータがありませんでした。データを集め始めたのは2004年からですが、心不全だけはなかったのです。私が心不全をやろうと提案したとき、「心不全をどう定義するのか」「BNPはいくらなのか」「どんな状態のものを選ぶのか」などと、多くの人たちから反対されました。しかし、なぜ循環器の専門医が心不全の診断をつけられないのか。循環器学会のガイドラインもあるし、心不全といったら心不全だと言い切って始めたのです。

データを集めて予想通りの結果が出たことで、特に高齢者の心不全については早急にアプローチしなければ、大きな問題になっていくことがわかっていました。その後は緩和医療に向かうでしょうが、今後ますます医療費が厳しくなる中で、高齢者の心不全への対策が求められています。

JROADの詳細については、実際に担当している循環器病統合情報センター センター長の宮本恵宏先生、研究開発基盤センター予防医学・疫学情報部の住田陽子さんに聞いていただく方が良いでしょう。

それでは、ここからは宮本先生、住田さんにも加わっていただき、お話を進めていきます。JROADを始めた経緯について、あらためてお聞かせください。

宮本 例えば、がんにはがん登録やがん基本法があり、様々ながんについての調査が国の事業として行われています。一方で循環器疾患には基本法はなく、全国的な調査もほとんどないのが実情です。小川先生が言われたように、唯一、循環器疾患診療実態調査を長期間行っているのは日本循環器学会だけでした。

小川 調査は2004年から始めて2005年だけストップし、2016年現在も継続しています。

宮本 調査は循環器学会に所属している施設に対し、様々な疾患の数や診療実態についてアンケート形式で行い、それを循環器病統合情報センターが引き継いで日循と共に進めているのがこのJROADです。国循で行うことになってから、調査の実施率は80~90%程度だったところ、現在は100%になっています。

小川 参加してくれないところは、住田さんが一件ずつ電話してくれました。

宮本 もう一つ、2年前から協力施設を対象としたDPCの情報も集め始めました。JROAD対象の1116施設のうち6割弱の610施設ではあるものの、それでも膨大な循環器のデータが集まっています。DPCには診断や治療、入院中の予後等、様々な情報が入っていて、解析できる形でデータベース化して提供しているのがJROAD-DPCです。

国立研究開発法人 研究開発基盤センター予防医学・疫学情報部 住田陽子 氏

例えばJROAD本体だけでも、心不全の入院患者数は全国で20万件を超え、その後、さらに増え続けていることがわかっています。こういった数字はこれまで日本にはありませんでした。データベース化したことで、心不全とはどんな状態なのか、急性心筋梗塞も含めて詳しく解析することができています。

小川 JROAD-DPCの基準はどれくらいですか。

住田 70万件です。

小川 70万件といえば、膨大なビッグデータでしょう。ただ、DPCのデータを6割が提供してくれても、残り4割の病院が提供してくれません。

住田 主に市民病院が多く、これは市の条例に審議をかけないといけないため、提供してもらうことが叶いませんでした。

小川 それが法律があれば100%になる。そこにデータがあるのに使えないのはおかしいし、DPCはそのためにあるものです。1100施設の全てに住田さんが手紙を書いて了解してもらったところからデータをもらっていますが、法律があれば手紙を書いて同意いただく必要はなくなります。

第3回終わり(第4回に続く)