国立循環器病研究センターは、心臓病や脳卒中などの循環器病を対象とする高度専門医療研究施設として1977年に設立され、2010年に独立行政法人へと移行。3年後の2019年には吹田市操車場跡地へ移転する予定で、同センターを核とした医療クラスター「北大阪健康医療都市」、愛称「健都(KENTO)」は、循環器病分野の予防・医療・研究で世界をリードする地域を目指す。

50年に一度といわれるこのビッグプロジェクトには研究や治療、人材育成に加え、民間企業との連携も求められるが、その難しい舵取りを任されたのが、同センター新理事長の小川久雄氏である。

連載5回の第4回は、JROADの事業を手がける意味、課題と成果、今後の目標などについて、小川久雄氏と宮本恵宏氏にお話を伺った。

データを提供することは
自分が受ける利益ではなく、価値である

前回、循環器にはがん対策基本法のような法律がないために、全病院からデータを提供してもらうことができず、ご苦労されていると伺いました。私たちはデータを提供することについて、国の共有財産であり、自分が受ける利益(ベネフィット)ではなく、価値(バリュー)であるという方向に変えていくことが求められますね。

宮本 まさにJROADも同じ考えに則っています。現在も本体は学会ですが、もともとJROADは日本循環器学会が主導してきたものです。なぜこの事業にナショナルセンターが取り組むのか、国の運営交付金等を使って調査を行うのか。それは、JROADとは国民の財産、価値であり、将来的に様々に活用することや継続性を考えると、やはり国の機関であるナショナルセンターで取り組むことが不可欠だからです。

小川 その通りです。全国がん登録で集められたデータも、全てナショナルセンターである国立がん研究センターに一元化されていますね。

宮本 はい。ただ、厚労省からは逆に法律にしない方がいいと言われました。というのも、法律で集めたデータは、それを使って研究はできないためです。

私はバイオバンクにも関わっていますが、例えば国立がん研究センターのバイオバンクで使用する検体の付属情報はセンターで院内登録しているデータがあるので、それをリンクすれば何もしなくても情報は集まるものの、それができません。なぜなら、院内登録は別の法律で決められ集めたデータであり、それを研究に利用するためにバイオバンクにつなげることはできないからです。私から見れば、非常に不思議なことです。

1962年に国立がん研究センター、1977年に国循がそれぞれ開設され、様々な面でがんの方が先行しています。循環器領域は遅れてスタートしたものの、がんセンターでの様々な取り組みや方法を見ながら、無駄にならないよう財産として登録されているデータをうまく活用しなければならないと考えています。

データの連結等に関して一つの法律ができると、別の面では妨げになることもある状況です。循環器に関するデータは、安全な環境でどう使えるかを考えていくことが求められますね。

リスクファクターを共有する循環器と脳卒中
情報を統合し、ガイドラインや施策に活用

JROADのアウトプットについて、お聞きしたいと思います。すでにいくつかのエビデンスが出てきて、直接診療に活かされる段階にきているのでしょうか。

宮本 例えば、急性心筋梗塞が1年間で200症例ある施設数をまとめた度数分布があります。また、心不全で見ると1施設178症例が全国平均ですが、施設によっては400例を超えるビッグスケールの病院から非常に少ないところまであります。この数値と入院患者の予後に関連があることがわかってきており、現在、論文化しているところです。

今年、この結果をそれぞれの施設がどこに位置するかをグラフで確認できる形にしてホームページに出します。他施設の状況はわかりませんが、自分たちの施設のここが優れている、あそこが足りないといったように、どこに位置付けられているかが自己評価できるようフィードバックします。

小川 これはまだみんな知らないことです。より多くの人に広く知ってもらうために国にもアプローチしたいところです。