小林氏によれば、エーザイと慶應義塾大学は2016年12月に認知症の新薬の探索・開発に関する新たな共同研究体としてEKID(Eisai –Keio Innovation Lab for Dementia)を立ち上げたという。「ここでは慶應義塾大学が持つ百寿者臨床サプルや臨床から基礎医学に至るサンプル、エーザイが持つアルツハイマー病治療薬の創薬力や神経領域における数々の臨床経験を合わせた“産医連携拠点”を信濃町キャンパスに作り、疾患概念を書き変えるような取り組みをしている」と紹介した。

イノベーション創出を目指してというテーマの講演を行ったのは、グラクソ・スミスクライン開発本部イノベーション戦略部イノベーション・インキュベーショングループ マネージャーの張家銘氏。同社では英国・サルフォードにおいて、「Salford lung study」という日常診療の場で無作為化比較試験を行っている。「サルフォードにある75軒の診療所、128軒の調剤薬局を結んで、患者がいつ診療所を訪れ、どんな治療をし、どんな結果になったのかを把握した上で、次の臨床試験に繋げていくことができる。この研究はマンチェスター大学、NHSやIT企業、そして自治体の協力のもとに実施。また、日本での無作為化比較試験の候補地として沖縄県を注目している」と語った。

左から 張家 銘氏 武内和久 氏 鈴木康裕 氏 林田 哲 氏
左から 張家 銘氏 武内和久 氏 鈴木康裕 氏 林田 哲 氏

続く講演で、アクセンチュア公共健康部門 マネジング・ディレクターの武内和久氏は、The Future of Healthcare2020年をテーマに講演。武内氏は、「10〜15年で日本の保険医療システムは大きく変わる。今から3年以内に医療機関を中心に繋がりが進み、3〜10年で患者を中心としたエコシステムが形成され、10年以上経つと保険医療システムの役割が抜本的に再定義される」と指摘した。その原動力になるのは、「オートメーション(PHRやEHR)、ビッグデータ(リアルタイムデータ)、コネクティビティ(リモートヘルス等)の3つだ」と提示した。

慶應義塾大学医学部外科学専任講師の林田哲氏National Clinical Databaseを患者自身が利用可能にする新たなプラットフォーム構築をテーマに講演した。これは、例えば自分が受けている乳がんの治療が正しい治療なのか、患者自身が判断するためのものだ。「仕組みとしては、患者が年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、乳がん細胞の種類といったパラメータを入力すると、NCDのデータからそれに該当する患者にどのような治療が行われているかが見られる。入力は携帯アプリから行え、患者は日々の治療経過を入力することで、より詳細な治療データを提供できる。そしてこのデータが次の患者の治療に役立つ」と紹介した。

最後の講演は、厚労省のデータヘルス本部PeOPLe基盤に向けたロードマップをテーマに、厚生労働省 保険局 保険局長の鈴木康裕氏が行った。まず、保険医療のICT化をネットワーク化とビッグデータ化に分けて状況を説明し、「ビッグデータ化についてはNDB、DPC、介護保険統合データベースの整備が進んでいるが、ネットワーク化に関しては全国に250程度ある地域保健等のネットワークのうち動いているのは6割程度だ」と述べた。

その理由として、鈴木氏は次の4つを挙げた。
1. 補助金を原資としてスタートするが、予算が終わるとそこで終わる
2. 非常に熱心な医師がやっているが、多くの医師が冷めていて広がりがない
3. 市町村などの地域単位にやっているため、圏外からは参加できない
4. 各地域で独自にベンダーと相談して作り始めるため、初期コストが高い

それを踏まえた上で鈴木氏は、「ビッグデータは宝だが、繋がれていなければ活用できない。そして、繋ぐ場合にはオープンな環境を作らないとコストばかり高くなり、国民のためにならない。PeOPLeは2020年までに必ず使えるようにする」と締めくくった。