経年劣化等が起きていないことへの保証

CSVの要求は一過性のものではない。定期的な確認がなされるべきであり、種々の規制要件は、これを第三者による定期的な監査の実施として具体的に要求する。ハードウエアを含んだシステムであるならば物理的な劣化についても気になるところであり、いわばビルや陸橋の定期検査と色合いも近いが、ソフトウェア一般でいえば、こうした物理的な劣化が問題となるわけではない。システム導入以降に更新されたOSやプリンタドライバその他の加えられた別のソフトウェアとの相性、あるいは手順変更による影響などが定期監査の焦点となる。

特段、システム仕様の変更についてはシビアであり、一般的な規制要件下では仕様変更の都度、CSVの実施が求められる。仕様変更に関する監査証跡情報の確保に加え、大げさにいえばわずか数カ所の文字フォントを変更した程度であっても、手順の保証は担保されているのか(確かにフォントを小さくすることで、これまでにない操作ミスが新たに発生し得るという理屈はある)、他の機能には影響がないのかといった追加のCSV要求が発生することもあり、たとえシステム仕様の変更がごく軽微なものであっても、尋常ならざる追加のCSV対応の労務が発生することもある。

未来のデータ保証とは

[画像のクリックで拡大表示]

厚労省からはCSVやデータの品質に関連して通知やガイドライン発出されているので、当該システムがどの薬事規制に従わなければならないかを意識しながら注視する必要があるだろう。ちなみにCSVがタイトルに含まれる最も新しいものは、2012年に発出されたGMP下における通知「医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドライン」(※)のようである。

コンピュータの登場は、社会学的には第3次産業革命と一般的には位置付けられている。昨今のIoTやAIの登場による社会的な変化については第4次産業革命と言ったり、その先のSociety5.0とか6.0といった流行り言葉のように、なんともたくさんの革命が起きるものだなと思ったりもする。

AIは人間の仕事を奪うのか、なんていう本がベストセラーにもなる時代。恐らくそれは正しく、また正しくないともいえるだろう。コンピュータの登場はたくさんの計算上手な人の仕事を奪ったが、その代わりにたくさんの確認検証の仕事を作った。自動運転は人間による運転よりもはるかに死亡事故を減らすと目されているが、人の感情は「責任の対象がよくわからない」自動運転による死亡事故を許容しない。

AIを中心としたビジネスが正しく動くことの保証要求は、恐らくコンピュータの動作保証の何倍も「監査・査察対応」の雇用を生むことだろう。クリエイティブな仕事がどんどんAIに取って代わられる一方で、我々人類はその動作確認、保証に莫大な時間と手間を自ら要求することになる。監査・査察やその対応業務を生業として考えるならば、職業機会に困ることはなさそうだ。それが望ましい未来の社会であるかどうかは別として。

第8回終わり(第9回に続く)