知りたいことを調べられるカタチに

先日、人間ドックを受診した。私が子供の頃は、体重であれば体重計、身長であれば身長計でそれぞれ身体測定をしていたものだが、今時の検査専門のセンターでは、身長も体重も一度に測定できる機材を使うのが当たり前のようである。少し困るのが身長の方で、機材の上に乗ってしばらくすると頭上から金属でできたバーが下りてきて頭上に触れると瞬時に測定が終わる。何が困るかと言うと、私は “決して実際よりも低く測定されないように”と、背筋をピンと伸ばすのだが、その姿勢をずっと維持するのは大変で、どのタイミングで背筋を伸ばせば良いのか分からないのだ。

昨年は失敗して例年よりも低い身長で測定されてしまった。今年はどうにか成功したようで昨年よりも4mm高く計測され、例年並みの値へ復帰した。専門家を気取って、「データ処理の世界で仕事をしているので、より正確に測定してもらうためにこうした行動をとっているのです」と言いたいところであるが、理由はそこではない。平均身長に達していない私の、わずかでも高く身長を測定してほしいという、どうでもよい、犬も食わない理由で毎回頑張っているのである。

さて、身長や体重の測定はともかくとして、世の中には測定するのが難儀なものも多い。例えば今日の朝食の総カロリーを測定したい場合はどうだろう。キチンと測定しようとすると、専門機材の準備等々に面倒な手間が掛かるため、大抵の人は正確な測定をあきらめてしまい、食パン1枚が約○キロカロリーで、目玉焼きは約○キロカロリーだ、といったように概算で我慢するはずだ(最近はスマホで画像を送れば食事のカロリーを推定してくれるサービスもあるようだが)。また、単に測定の手間が難儀という問題ならば、解決へのハードルは高くもなさそうだが、愛情、友情、満足度、幸福度などを測ろうとなってくると、こうした概念体系はそもそも捉え方や定義が人によって違うし、しかも目に見えないもの。こちらのハードルはさらに高そうである。

さて、本コラムは第二部の技術編として品質確保(全4回)、研究デザイン(全5回)、データ分析(全5回)を取り上げてきたが、今回からの4回は実際に医療データを用いた研究をどのように実践していくのか、という第三部のパートに入る。まずは知りたいことをどのようにして調べることのできるカタチの問い「リサーチ・クエスチョン」にするのか、というテーマを取り上げる。愛情や友情の測定に負けず劣らず、医学薬学系分野においても、疼痛や精神疾患症状など、「調べられるカタチ」にするためのハードルが高いものは結構ありそうだ。