患者主体の医療に向けて
誰がリーダーシップを摂るべきか

マホーニー  橋本先生が指摘された現象は米国でも見受けられます。日本と欧米は高齢化社会を抱えた中で、QOLを高いまま維持したくても、コストが高騰しています。市場は10年前と比べて大きく変化し、それに伴い今まで以上に低侵襲治療が注目されています。高齢者にはやはり体への負担が少ない低侵襲の治療が望ましいかと思います。また、患者のために尽くすことはコスト削減になります。病院に行かなくて済むよう、自ら健康を管理できるようになれば、患者負担も医療費も減らすことができます。

弊社のR&Dでは、製品の設計段階から医療費削減につながるかを常に意識しています。20年前までこのトレンドは現在ほど顕著ではなかったため重要視していませんでしたが、低侵襲治療を提供しなければ、臨床上の価値の創出とコスト削減は実現できなくなっています。

橋本  医療の発展において、最初に来たのはテクニックオリエンテッドです。例えば、CABG(冠動脈バイパス術)とPCI(冠動脈インターベンション治療)とあった場合、どちらが良いかというコンペティションです。どんな医療技術でも新たに開発されるときには、2つの異なるモダリティのコンペティションがその技術を発展させる大きなファクターでした。

その次に来たのがディジーズオリエンテッド、つまりEBMです。この病気はこんな症状で、この治療法が良く、それをエビデンスとして出す。あるカテゴリーに収まる疾患であれば、この治療法で最良の結果が得られるというものです。これは確かに事実ですが、その治療法が患者にとって本当に幸せかどうかは別問題でした。

そして、EBMの次にペイシェントオリエンテッドが来ました。例えば脳外科であれば、19歳の男性に脳動静脈奇形(AVM)があった場合、結果が出るのに3年待たなければいけないガンマナイフより、手術を選びます。なぜなら、その男性がエベレストに登りたい、スポーツ選手になりたいという希望を持っていても、3年待ったらチャンスを失います。患者によって状況や背景が異なるため、それを勘案した治療がEBMを超えたペイシェントオリエンテッドです。

さらに言えば、若い医師によく説明するのですが、ここは戦場で橋の上にスナイパーがいて、100人通ると1人だけ撃たれる。しかし、橋を渡りきれば安全だ。これが医療です。医師は99%安全だから渡れと言うけれど、では自分だったら、あるいは5歳の息子に99%大丈夫だから向こうに行けと言えるでしょうか。もちろんそこに正解はありません。しかし、99%安全という中に全く違う状況が含まれていることを医療者として常に考え、議論して治療法を選択すべきです。

ただ、チーム医療の中で、特に専門分野に分かれている心臓病治療において、ペイシェントオリエンテッドの医療を行うために、誰がリーダーシップを摂るのかは非常に難しい問題です。

第1回終わり(第2回に続く)