橋本  大変難しい問題です。日本では塩分の摂取量を2g減らしただけで、心臓病や脳卒中の死亡者数は2万人減ります。しかし、塩分を控えろ、タバコは吸うなと言うだけでは全く効果がありません。塩分を減らした料理は美味しくないため、多くの病院で失敗しています。そこで、当センターでは発想を転換し、塩分の少ないメニューを紹介した本「かるしおレシピ」を作ったところベストセラーになりました。塩分を控えるのではなく、あえて軽く使うことで料理が美味しくなることを知ってもらえたのです。

一方で、生活習慣病をはじめ、心臓病や心房細動とはどのような疾患かを理解してもらうためにパンフレットを作り病院で配布していますが、全ての人に周知してもらうことは、なかなか難しいと感じています。

テクニックから始まる医療
そこには新しい発見と進化がある

橋本  日本は超高齢社会に突入しましたが、高齢化は世界中で進行している問題です。冒頭に述べたように、質の高い医療を提供し続けるためには地域における医療機関の再編が必要であると同時に、各病院がどんな疾患に対し、どのような治療を行う病院であるのか、一般にもわかりやすく見せていくことが重要です。そして、医療が果たす役割も、病気になった人を治す医療から、病気になる前の予防の観点を持つことが求められていきます。

マホーニー  おっしゃる通りです。弊社が開発した植込み型除細動器とペースメーカーは、予防と治療の両方の実現を目指しています。患者は診断機能付きペースメーカーによって、病院から離れた場所にいても携帯電話で血圧と体重を医師に報告することができ、病院にいる医師はデータから問題の兆しがあれば薬を減らす指示をしたり、食生活の改善を促すなどして来院を最小限に抑えます。

橋本  そうした取り組みはますます医療費がかかるように思われがちですが、実はそうではありません。

これは私が好きな言葉ですが、2002年にノーベル生理学・医学賞を受賞した英国の生物学者シドニー・ブレナー(Sydney Brenner)が、次のように述べています。

Progress in science depends on new techniques,new discoveries,and new ideas, probably in that order.
(テクニックがなければ発見はない。発見しなければアイデア生まれない)。

つまり、医療技術も医療機器もテクニックが最初に来て、そのテクニックが創られることで今まで知らなかった新しい発見があり、その後に初めてコンセプトやアイデアが生まれてくる。今後、QOLを高める医療機器をどんどん発展させていくと、もっとシンプルでさらに低コストなものが出てくるではないかと考えています。

マホーニー  弊社のミッションは、Advancing Science for Lifeです。この使命に対し、私たちはイノベーションで応えていきます。超高齢社会を迎えた日本は課題先進国であり、そこに直面する問題に、弊社は製品のみならず、医療の生産性を高めるソリューションを提供し貢献していきます。

新しいビジネスモデルに挑戦し、社会に尽くされている橋本先生の姿に大変感動致しました。本日はお会いできて光栄です。ありがとうございました。

橋本  こちらこそ、お会いできてとても楽しい時間を過ごせました。貴社は、企業姿勢や将来の方向性が明確なので、大いに期待できると感じました。また、今回の対談で私たち医療者にとって非常に大切なことを知ることができました。

第2回終わり(2回連載)