孤立化を防ぐつながりづくり

ASVのもう1つの重要な役割は社会的なつながりづくりの支援である。ASVはパーティやピクニックなどの社交イベントを定期的に行い、会員同士のつながりづくり、人間関係づくりに力を入れている。

私は6年前、ASVのバーベキュー・パーティを取材したが、バークレーの緑豊かな丘の上で、参加者が個々の生活状況や関心事などについて楽しそうに話していたのが印象的だった。

前述のジョイスさんがASVに入会したのは在宅支援が必要だったのに加え、社会的なつながりを強めたい気持ちがあったからだという。そして実際に入会すると、興味のあるイベントや同好会をいろいろ見つけることができ、本当に良かったと話す。彼女は他にメディテーションや麻雀のグループにも参加している。

それからミーティングでは、日本の高齢者の孤立問題についても話題になった。マイリンさんに「日本では高齢者の孤立が深刻だと新聞で読んだが、本当ですか?」と聞かれたので、私は「日本にはASVのような支援団体や、シニアセンター(高齢者の自立を支援する公的施設で、各自治体が連邦・州政府の助成金などで運営)もないので、在宅高齢者が気軽に支援を求めることができず、社会的に孤立している人が少なくない」と説明した。

ちなみにASVには人と人をつなぐ「コネクション」という支援プログラムがあり、孤立した高齢者の自宅にボランティアを送って一緒にお茶を飲んだり、話をしたり、ゲームをしたりしている。このような交流を通して、ひきこもり状態だった人が孤独感を和らげたり、人間関係を取り戻したりできるのだという。

私はさらにマイリンさんの質問に答える形で、日本の独居高齢者が孤立したあげくに一人で亡くなり、何日も何週間も発見されず、悪臭が漂ったり、遺体に蛆虫がわいたりする悲惨な状況について説明すると、メンバーたちは皆、驚きの声をあげた。

モンローさんは「なぜ近くに住む人たちが気づかないのか不思議でならない。特に集合住宅に住んでいて、一人暮らしの高齢者が亡くなれば気づきそうなものだが、隣人同士の会話がないのですか?」と尋ねてきた。私は、「日本では隣人同士の会話、交流は少ないのです」と答えるしかなかった。

モンローさんは幅広い年齢層がいる集合住宅に住んでいるが、住民同士の交流は深く、住宅内でパーティなども開いているので、お互いの事をよく知っている。だから、近くの一人暮らしの高齢者を何日か見かけなかったりすれば、隣人がドアをノックして、「お元気ですか?」と声をかけたりするという。

ジョイスさんの集合住宅でも同様で、住民同士の交流は深い。数週間前には夜9時頃、誰かがドアをノックしたので開けると、若い夫婦が立っていて、「あなたをしばらく見かけなかったので、ちょっと気になって声をかけてみました」と言った。このように隣人が気にかけてくれるので、彼女は一人でも安心して暮らせると話す。

モンローさんによれば、隣人同士がお互いに交流をもち、声を掛け合ったりするのは米国では普通のことだという。このような状況であれば、一人で亡くなっても比較的早く発見されるだろう。モンローさんの住宅で以前、独居高齢者が夜寝ている間にベッドの上で亡くなった。翌朝、彼が起きてこなかったので、隣人はドアをノックし、応答がなかったので、彼の家族に連絡したという(前もって連絡先を預かっていた)。

米国人は一般的に家族以外の人たちとの付き合い、交流に積極的だが、日本人はこれとほぼ正反対だ。それはOECDなどの国際比較調査においても示されている。日本人は家族以外の人たちとの付き合いが他の国々の人々と比べて非常に少なく、病気やケガなど緊急の場合でもお互いに助け合おうとしない。一方で、料理を作った時など近所の人におすそ分けする人の割合は結構高いが、これは一体どういうことなのか。おすそ分けするのに、なぜ緊急時に助け合おうとしないのか。他人に助けを求めるのは、自分の「プライド」が許さないのだろうか。

日本では家族の絆が薄れ、政府やNPOによる支援も不十分な中、隣人同士の声掛け、見守りはかつてないほど重要になってきている。悲惨な孤立死を防ぐためには政府やNPOの支援を強化するだけでなく、日本人一人ひとりの意識を変えなければならないのではないか。今回、ASVの「80歳プラスの会」の人たちの話を聞いて、私は改めてその考えを強くした。