最低月2~3万円で生活できる

日本人退職者がフィリピン移住を考える理由としてよくあげるのは、安い生活費、暖かい気候、南国の解放感、日本との距離の近さなどである。

まずは生活費の安さからみてみよう。『新・金なし、コネなし、フィリピン暮らし! ゼロからはじめる共同生活マニュアル』(2017年)の著者・志賀和民氏によれば、フィリピン人並みの生活をするならば1日200ペソ(1ペソ=約2.2円)、月に1万3000円程度で、食費はなんとかまかなえる。宿は月極でワンルームの部屋を賃貸したら5000ペソ、1万1000円ほどからある。それで合計2万~3万円程度だが、この額はフィリピンでは大卒新人社員の給与に相当するという。

志賀氏は日本のプラント建設大手のフィリピン現地法人の社長を務めた後、55歳で退職し、2002年にSRRVを取得。そして2005年、フィリピン在住の日本人退職者が安全で快適な生活を送れるように支援する会社「PASCO=Philippine Active Senior Company Inc.」を設立した。

PASCOは退職者のビザの取得から、生活ならびにビジネス全般における行政手続きを代行し、また、ウェブサイトでフィリピンでの生活、食事、住居、買い物、フィリピーノ気質に至るまで様々な情報を提供している。

志賀氏の著書によれば、フィリピンでは外国人は土地を買うことはできないが、コンドミニアムなら所有できる。コンドミニアムはピンからキリまであって、200万ペソ程度から1000万ペソ超のものまであり、広さは20平米から300平米、間取りはワンルームから4LDほど。中規模以上のユニットにはメイドルームもあるという。フィリピンは人件費が安いので、住み込みのメイドが月4000ペソ~5000ペソほどで雇えるそうだ。

日本人倶楽部の副会長を務める三輪隆造氏も人件費の安さを指摘する。「人が余っているという意味で、こちらでは恵まれた生活ができます。家と車とゴルフ会員権を持ち、メイドさんと運転手さんがついて王様のような生活です。だから駐在員の奥さんの中には、“日本へ帰りたくない”という人がたくさんいます」。

三輪氏は日本の大手自動車企業のフィリピン駐在員として60歳で定年を迎えた後、関連部品会社の現地法人で72歳まで勤め、その後もずっと現地に住み続け、滞在歴は約30年になる。そして81歳になった今も、フィリピン生活を大いに楽しんでいるという。

「ゴルフが安くできるのが大きいですね。私は年に100回以上ゴルフをやりますから。こちらのゴルフ場は、会員の家族も無料でプレイできます。月会費は取られますが、コースの使用料は無料で、キャディの日給は1000円くらい。1回ゴルフしてランチを食べてキャディに払っても、1500円から2000円くらいで済みます」。

PRA日本人倶楽部にはゴルフ好きの会員が多い

実は三輪氏は12年前、前立腺がんと診断され、医師から「もう手遅れです。手術はできないし、放射線治療もできません」と言われた。でも、フィリピンでずっとストレスのない生活を続けているからか、がんの進行は抑えられているという。

「医者から“なるべくストレスのない生活をしなさい”と言われていますが、ここは気候的にストレスがないですから。まあ、変な話、家にいる時はパンツ一丁で、1年中いられる。そういう意味では全くストレスのない生活ができます」。

フィリピンも暑いことは暑いが、日本の夏と比べると、少しカラッとしてじめじめしていないので、結構過ごしやすい。それに日本のように最高気温が40℃を超すことはなく、暑くてもせいぜい35℃か36℃くらいだという。

ストレスのない生活によって、三輪氏のがんの進行が抑えられているのだとしたら、それこそフィリピン生活ならではの効果といえるのではないか。