墓を閉じることを「墓じまい」といい、そこから取り出した遺骨を他の寺院などに移すことを「改葬」というが、これを行うには面倒な手続きを経なければならない。お墓事情に詳しい専門家によれば、墓じまい・改葬には手間と時間がかかり、精神的にも体力的にも大きな負担がかかる。だから、中高年にとっては元気なうちに準備を始めることが大切だという。

「改葬」の手続き、費用

近年、少子高齢化や地方の人口減少などの影響で、墓じまい・改葬する人が増えている。厚生労働省の衛生行政報告例の統計によれば、2016年に全国で行われた「改葬」の件数は97,317件で、その5年前と比べて約3割増加したという。

実は、いま65歳で一人暮らしの筆者も近い将来、自分が面倒をみてきた親族の墓を閉じて、遺骨を「永代供養墓」に移したいと考えている。

改葬を行うにはまず、墓がどんな場所にあるかを把握しなければならない。一般的に墓はとこが管理するかによって、自治体が運営する公営霊園、宗教法人などの民営霊園、お寺にある寺院墓地などに分かれるが、改葬のための行政の手続きに関しては基本的にどれも同じである。

改葬を行うにはまず、今の墓がある市町村の役場の担当窓口へ行き、「改葬許可申請書」を入手することだが、それはインターネットでも可能だ。筆者は親族の墓がある埼玉県鴻巣市の市役所の市民課に連絡し、ホームページで「改葬許可申請書」をダウンロードした。

申請書の様式は市町村によって異なるかもしれないが、死亡者の氏名・本籍・住所、死亡年月日、埋葬の場所・年月日、改葬の理由・場所などの記入欄があるのはだいたい共通している(写真参照)。もし不明な点があれば、「不詳」と記入しておけば問題はないという。墓に複数の遺骨が入っていたり、墓石に複数の名前が刻まれていたりする場合は、全員分の申請書を提出しなければならない。

申請書に記入したら、今の墓がある墓地管理者(寺院の場合は住職)に提出して、署名・押印をもらう。その際、住職に申請書を送りつけて、「署名してください」とお願いする人もいるそうだが、それでは住職に失礼にあたり、それによって関係がこじれてなかなか署名してもらえないなんてことになりかねない。そのため、できれば住職に直接会って改葬の理由などを丁寧に説明し、理解が得られるように努めた方がよいという。

この作業と同時進行でやるべきことは、遺骨の移転先の墓地・寺院を見つけて、そこの住職から「受入証明書」(改葬承諾書ともいう)を発行してもらうことだ。そして、「改葬許可申請書」と「受入証明書」を市役所の担当者に提出すれば、その場で「改葬許可書」が交付される。これで初めて墓の中から遺骨を取り出し、他の所に移す作業を始めることができるのである。

次に「改葬許可書」を墓地管理者である寺院に提出し、墓石の撤去や遺骨の取り出しを行う業者(石材店など)を選定する。この場合、お寺が懇意にしている業者があったりするので、住職に聞いてみた方がよいという。自分で探す場合はいくつかの業者に見積りを依頼して、安いところを選べばよい。

墓の撤去費用は墓地の広さや墓石の大きさ、作業の方法、住職へのお布施代(墓石から魂を抜く「閉眼供養」でお経をあげてもらう)などによって変わってくるが、相場はだいたい20~30万円くらいである。

これらの手続きは非常に面倒だが、「墓地、埋葬等に関する法律」にも規定されているので、届け出を出さずに自分で勝手に進めることはできない。

また、改葬を行う上で最も注意すべき点は、お墓に関係する家族、親族の間でよく話し合って進めることだという。そうしないと、後になってから、「なんで勝手に墓をつぶしたんだ」などと言い出す人が出てくるかもしれないからだ。