お年寄りの呼びかけに反応し、心を癒してくれる「パロ」

一方、言語型の「ペッパー」はお年寄りと会話をしながら、触れ合うことができる。筆者が新とみを取材した日、「ペッパー」は30数人のデイケアの利用者と一緒に歌を歌ったりして、場の雰囲気を大いに盛り上げていた。

ペッパーが、「では、楽しいレクリエーションの時間です。準備ができたら、メニューから、今日行うプログラムを選んでください」と言うと、一斉に笑いが起きた。職員が「春がきた」を選ぶと、ペッパーは「皆さん、“春がきた”です。春の足音を聞いてくださいね。それでは元気に歌ってみましょう。歌は3番まで歌いますね」と言って歌うように促した。ペッパーが一緒にやることで、多くのお年寄りから笑顔が出て、とても楽しそうな雰囲気だった。

このように新とみでは、介護ロボットを積極的に導入しながら、職員の負担軽減や支援サービスの質の向上、被介護者の満足度の向上を目指している。

政府が介護ロボットの普及促進を図る

会話と身ぶり、手ぶりで場を盛り上げる「ペッパー」

それでは現在のところ、介護ロボットはどのくらい普及しているのか。

介護ロボットの情報サイト「介護ロボットONLINE」が2017年6月に全国の介護福祉施設を対象に行った調査では、約3割の施設が介護ロボットを導入していることがわかった。

言い換えれば約7割の施設は導入していないわけだが、その理由として最も多かったのは「価格が高いから」だった。たしかに介護ロボットは費用が高く、たとえば、概算で「スカラモービル」152万円、「リショーネ」90万円、「マッスルスーツ」47万円、「パロ」36万円、「見守りケアシステム」33万円などとなっており、個々の施設が補助金なしで導入するのは容易ではない。

そこで厚生労働省は2015年に「介護ロボット等導入支援特別事業」として52憶円の補正予算を計上し、全国の約5000の施設に介護ロボット導入の補助金を配布した。

その後、施設側への補助金は縮小されたが、政府は介護ロボットの現場のニーズの集約や、介護ロボットを活用した「介護技術開発支援モデル」の開発など、 補助金以外の支援に取り組み始めた。

とくに興味深いのは、介護施設の指導監督業務を担う厚生労働省と、介護ロボットメーカーへの開発支援などを行う経済産業省が連携して、介護ロボットの開発と普及の推進に取り組み始めたことである。

それから厚生労働省は2018年4月、介護ロボットの開発と普及を促進するための新たな部署「介護ロボット開発・普及推進室」を設置し、職員10人に加え、専門家9人を参与に任命した。同省老健局高齢者支援課では、「各参与から助言を得ながら、介護ロボットの開発と普及の好循環を創出し、介護現場の革新を目指していく」としている。

介護ロボットが市場にどんどん普及し、量産化が進めば、結果的に価格は下がり、導入する施設が増えるという好循環につながるかもしれない。

前述したように、現在介護ロボットを導入している施設は約3割にとどまっているが、注目すべきは、そのなかで「今後も介護ロボットを使い続けたい」という施設が約8割に達していることだ。それはつまり、これらの施設の多くが介護ロボットの利点をよく認識しているということであり、価格面の課題が改善されれば、新たに導入する施設は大幅に増える可能性はある。