人は年を取ると、自分でも気づかないうちに身体機能が衰え、それが車の運転に影響し、安全な運転を続けるのが難しくなったりする。そういう場合は運転をやめるべきなのだが、問題は高齢ドライバーがそうなった時、どのタイミングで、具体的に何を基準にその決定をするかである。

海外の状況をチェックしてみると、海の向こうのアメリカは車がないと生活に支障を来すような「車社会」ということもあり、高齢ドライバーの重大事故は多発している。しかし、日本と大きく異なるのは、健康問題と運転の不安を抱えた高齢者が「いつ運転をやめるか」の適切な判断をできるようにするための支援体制が整っていることだ。その実態を明らかにしながら、高齢ドライバーの安全運転の問題について考えてみたい。

高齢者のための「安全運転ガイド」

DMVが発行している「高齢者安全運転ガイド」

州によって法律が異なる米国には、各州ごとに運転免許の試験や免許取得者の教育管理などを行う「車両管理局」(DMV=Department of Motor Vehicles)が設置されている。日本の運転免許センターのようなものだ。

カリフォルニア州のDMVは70歳になった高齢ドライバーに再試験を課している。彼らはDMVに出向いて筆記と視力試験を受け、問題がなければ免許は更新されるが、問題ありとなれば免許失効の可能性がある。

視力試験ではDMVの基準「0.5以上」に達しなければ、眼科医の診察が必要となり、そこで深視力検査を受けた上で「安全運転が可能」と判断されれば免許は更新される。

それから健康問題を抱えた人や、警察官・試験医師などから「安全運転の懸念」を指摘された人には筆記・視力のほかに実技試験が課せられる。この人たちの中には実技試験に合格する自信がなくて、そのまま免許を返納する人もいるという。しかし、問題を抱えていても安全運転ができると判断されれば、免許は更新されるのである。

DMVは高齢ドライバーに正しい運転方法を伝授するために、「高齢者安全運転ガイド」を発行し、誰でもWebからダウンロードできるようにしている。これには高齢者が長く安全運転を続けるための方法や、「いつ運転をやめるか」の判断基準となる情報などが満載されている。その一部を紹介しよう。

まずは安全運転には脳と体の健康が重要だが、そのためには適切な栄養摂取が不可欠ということで、食生活についてのチェック項目に「はい」「いいえ」で答えるようになっている。

― 少なくとも1日3回は食事をしている。

― ほとんど毎日5ポーションの野菜を食べている。

― ビタミンのサプリメントを摂取している。

次は「運転スキル自己評価アンケート調査」で、聴覚、視覚、頭と首、腕と手、脚と足、認知などの機能が運転に適しているかを自分でチェックするものだ(一部抜粋)。

DMVの「運転スキル自己評価アンケート調査」

― 聴覚:車の窓を閉めたまま、サイレンやクラクションが聞こえるか?

― 視覚:物がしっかり見えているか? 夜でもはっきり見えるか?

― 頭と首:頭と首を左右両方に同じ距離だけ回すことができるか?

― 頭と首:肩越しに振り返れるくらい頭と首を後ろに向けられるか?

― 腕と手:腕と手が疲れる(痛くなる)ことなく、長距離を運転できるか?

― 脚と足:膝を曲げたまま、ブレーキペダルを踏めるか?

― 認知:不安なくスムーズに車線変更できるか?

― 認知:交差点で落ち着いて運転できるか?

これらのチェック項目で、1つでも「いいえ」と答えた人は専門医に相談し、治療を受ける必要がある。それでも改善されなければ、運転をやめることを考えなければならない。