今年は5月に暑い日が多かったこともあり、早くも熱中症で救急搬送される人が続出している。総務省消防庁の発表によれば、この数年で熱中症による救急搬送者数が急増し、2014年夏(6~9月)には全国で4万0048人が搬送され、その半数近くの1万9146人は65歳以上の高齢者だった。また、厚生労働省によれば、2013年に熱中症で死亡した人は1077人で、そのうち約77%以上が65歳以上だという。つまり、高齢者は熱中症になりやすく、いったん発症すると重症化しやすい傾向があるということだ。
なぜ高齢者は熱中症になりやすいのか、熱中症の徴候に早く気づき、対処する方法はあるのか、熱中症を予防するにはどうしたら良いのかなどについて考えてみよう。

高齢者が熱中症になりやすい理由

熱中症のポイントは主に2つある。1つは体内の水分と塩分の不足で起こる脱水症、もう1つは体温が上がり過ぎることで起こる臓器障害である。つまり、高温の環境で汗をかくと体液が失われ、水分の不足から栄養素や老廃物などの出し入れが滞って障害が起こる、これが脱水症だ。さらに発汗が続いて体液が失われると、体温調節機能が維持できなくなり、脳をはじめ体中の臓器にダメージが及ぶのである。

高齢者の場合はもともと体液が減少し、水分や塩分の摂取に重要な食事量も低下しがちで、体温調節も十分機能しなかったりするため、脱水症を起こしやすい。脱水症状が出る前の段階で、体の1~2%の体液が失われている状態を「かくれ脱水」と呼ぶそうだが、これに早く気づき、対処することが重要なのだ。

医療や福祉の専門家が「かくれ脱水」に対する正しい知識と予防・対処方法を広めようと、「教えて!『かくれ脱水』委員会」(服部益治委員長)を組織しているが、それによると、高齢者が脱水症になりやすい理由としては大きく6つあるという。

① 筋肉が低下する
筋肉は体で最も多くの体液を含んでいる場所だが、高齢者は加齢と活動量の低下で筋肉量が減少し、それが体液の減少にも直結している。

② 喉の渇きを自覚しにくい
加齢と共に喉の渇きを感じる機能が低下し、体液が減少してもそれを自覚しにくくなる。

③ 腎臓の機能が低下する
体液の喪失を防ぐには腎臓で水分や電解質(主に塩分)を再吸収する必要があるが、加齢と共に腎機能が低下するため、それが難しくなる。

④ 全体的な食事量が不足する
加齢で食が細くなったり、食べ物を飲み込む機能が低下したりすると、食事量が減り、水分と電解質が不足しやすくなる。

⑤ トイレに行く回数を減らしたいから水分を摂らない
腎臓機能が低下して薄い尿がたくさん出るようになると、水分制限をするようになる。

⑥ 利尿作用を持つ治療薬で体液を喪失しやすい
利尿効果を持つ高血圧や心不全の治療薬を使用すると、尿の量が増え、体液を失いやすくなる。

このように高齢者は熱中症になりやすい条件が揃っている上に、発症すると重症になりやすいので要注意なのだ。特に在宅の高齢者は「かくれ脱水」に気づかず、どんどん進行するケースが少なくない。高齢者の熱中症の約86%以上は住居内で発症したとの調査結果もある。