コミュニティカフェで取材に応じる高島平新聞の村奈嘉義雄さん
コミュニティカフェで取材に応じる高島平新聞の村奈嘉義雄さん

コミュニティカフェでの交流

低料金で飲み物や軽食を出し、シニア層を中心としたお客に居場所や出会いの場を提供しているのがコミュニティカフェである。前出の村奈嘉さんが運営している「コミュニティカフェ・高島平駅前」(以下、CCT)では、知らない客同士が相席になって話をしやすいようにテーブルが配置されている。

CCTは日曜・祝日以外は毎日10〜18時まで営業し、メニューはコーヒー220円、ジュース270円、カレーライス400円となっている。ここには1日20〜30人が訪れる。定年退職した人が多いが、団地に住む中国人留学生も毎日2〜3人来て、日本での生活や趣味などについて話している。彼らは中国で看護師資格を持ち、日本の国家試験を受けるために日本語学校に通っているが、その帰りに立ち寄り、人生経験豊かな高齢者から実用的な日本語や日本社会についていろいろ学んでいるのだ。高齢者の方も中国のことを教えてもらったりして、異文化交流を楽しんでいるという。

CCTでは生演奏が楽しめる「おじさんライブ」や、シニア向け英会話教室なども実施している。私が取材した前日には「ジャストフレンズ」という中高年バンドが昭和歌謡やオールディーズなどを演奏し、満員で盛り上がった。ほとんどは高齢のお客だったが、小中学生も何人かいたという。

リーダーの横山博康さん(56歳)は、「最近の子どもたちはカラオケやテレビばかりで、生バンドを見る機会があまりない。次世代の人たちに生バンドの良さをわかってもらい、音楽の輪が広がっていけば良いと思います」と話す。

英会話教室は、団地に住む英国人男性が週4回開いている。生徒は50代、60代の女性が多く、手作りのお菓子やパンを持ち寄り、お茶会のように英語でおしゃべりする。クラスは初級、中級、上級と分かれ、簡単な日常会話から、世界の金融・経済の話まで雑談の内容は幅広い。生徒の中には外資系の金融機関を退職した人や留学経験者などもいて、「また英語を話したくなったから」と参加している。一方、英語を学ぶことで新しい人生を切り開く人もいて、50代の女性はこの教室で学んでからオーストラリアへ留学したという。

高島平団地の中と周辺にはCCTを含め、6軒のコミュニティカフェがある。フィリピン料理中心の「高島平多国籍食堂 ハロハログルメ」は、地域の高齢者や若者、外国人住民らのたまり場、おしゃべりの場として親しまれている。また、高齢者が「1人でおうちにいるより、ここに来たいなぁ」と思ってもらえるような場所作りを目指しているという「なごみサロン・ゆずり葉」では、昼食は居酒屋メニューをアレンジして出し、夕方から「炭火焼JO」の看板をあげている。
 どこも個性的で楽しそうな雰囲気だが、これらのお店が高齢住民の居場所づくり、つながりづくりに大きな役割を果たしているのである。

サ高住「ゆいま~る高島平」

さらに高島平団地は30戸の空室をバリアフリーに改修し、緊急時の対応や生活支援サービスなどを行うサービス付高齢者向け住宅(通称、サ高住)として提供している。UR都市機構は全国で1700団地(約70万戸)を管理しているが、その中で団地内にサ高住をつくったのは高島平が初めてだという。

このサ高住「ゆいま~る高島平」は2014年12月に入居が開始され、2015年7月に30戸が全て完売した。人気の理由としては交通の便の良さや必要な施設が揃っていることなどに加え、多世代交流が盛んなことがあるようだ。

ゆいま~る高島平を運営している(株)コミュニティネットの担当者は言う。
「普通の高齢者向け住宅や老人ホームなどと違い、ここには若者や子連れの家族なども住んでいます。介護が必要な高齢者ばかりに囲まれて生活していると、“明日は我が身ではないか”と考えて気分が暗くなったり、疲れてしまったりしますが、多世代の人が一緒に住んでいればそういうことを防げるかもしれません」。
 ゆいま~る高島平では居住者が団地内、地域内で異世代交流を積極的に行えるように情報提供をしたり、コミュニティカフェの食事クーポン券を発行したりしている。

最後に、高島平団地の孤立死問題はどうなっているのか。高島平新聞の村奈嘉さんによれば、団地内で起きている孤立死は年間数件ではないかという。独居高齢者が多く住んでいる割には、それほど多くないように思う。

団地自治会の役員に孤立死防止対策について尋ねると、近隣住民に何か異常を感じたら情報提供をお願いしたり、民生委員に動いてもらったりしているくらいで特に対策はとっていないという。それでも、住民同士(特に一人暮らしの)がサークル活動やコミュニティカフェ、老人クラブなどを通して交流を深めることで孤立死防止につながっているのではないかと思われる。定期的に活動に参加していれば、何かあった時、「最近、あの人を見かけないね」などと仲間が心配し、帰りがけに立ち寄ってみたりするからである。