私が取材したバークレーのシニアセンター(NBSC)にも毎日多くの高齢者がやってきて、カフェテリアで楽しそうに交流していた。20代でアルゼンチンから移民し、米国で働いてリタイアした男性(84歳)は1100ドル程度の年金収入しかないが、楽しく暮らしている。シニアセンターで4〜5人の仲間とランチやコーヒーを共にしながら雑談するのは至福の時間だという。

もう1つの楽しみは趣味のタンゴで、地域のカフェで月2回女性パートナーと一緒に歌っている。お客さんはタンゴの歌に合わせて手をたたいたり、踊ったりして喜んでくれるが、「人を楽しませて、お金ももらえる。こんな嬉しいことはない」と話す。

NBSCには他にパーティなどを行うイベントホール、テレビラウンジ、図書室、カラオケルーム、ビリヤードルームなどがある。イベントホールにはピアノが置いてあり、全盲の高齢男性が楽しそうにクラシックを演奏していた。このピアノは前もって使いたい日時を予約しておけばいつでも使えるようになっている。

NBSCでは毎月会員の誕生日パーティを行っている
NBSCにはカラオケルームやビリヤードルームもある

シニアセンターのもう1つの役割は下流老人への支援だ。NBSCではランチを無料提供したり(寄付は歓迎)、野菜・果物・パンなどをバッグにつめて配付したりしている。また、生活苦を抱えた利用者にはSSIや家賃補助、公的医療保険などの申請方法を支援している。

NBSCのソーシャルワーカーのサウロ・ビヤトロ氏はいつも下流老人に対し、こう話しているという。
「あなたはこの国で長く働き、税金を払い、貢献しています。だから政府があなたのためにサービスを提供しようとしている。これは施しではなくお返しですから、堂々と受けるべきです」。

加えて、ビヤトロ氏は、「これらの支援は高齢者が最低限の生活を維持するために必要なものです。年をとって働けなくなり、人生の最終ステージを迎えてそんなに惨めに暮らすわけにはいかないでしょう」という。

私が米国で下流老人の取材をしながら強く感じたのは、ソーシャルワーカーやNPOスタッフの多くが、「高齢者の生活と尊厳を守ろう」という強い意思を持っていることだ。日本では以前、電気代を払えずに電気を止められてしまった高齢男性(83歳)の話がテレビで報じられたが、これは「高齢者の尊厳」という点から考えてどうなのか。私は米国のソーシャルワーカーにこのケースについて説明すると、その人は驚きの反応を示し、「高齢者虐待ではないか」と主張した。

つまり、高齢男性は夏の暑い時期に電気を止められ、エアコンを使えず、熱中症の危険にさらされた。これが米国だったら、電気を止めた会社だけでなく、その状況を放置した(見て見ぬふりをした)周囲の人も罪に問われる可能性があるというのだ。それにしても、熱中症のリスクがあるにもかかわらず、電気代を払えない高齢者の家の電気を止めてしまう、このような行為を許してしまう日本社会の冷たさについて改めて考えさせられた。

米国には低所得家庭の電気・ガス・水道代などの支払いを援助する低所得世帯光熱費支援プログラム(LIHEAP)があるが、日本でも同様の支援措置を設ける必要があるのではないか。