連邦政府職員として働いたアンディさん(仮名 66歳)は約8年前に58歳で早期退職した。それまで住んでいた家賃1500ドルのアパートを引き払い、1万8千ドル(約216万円)で中古のモービルホームを購入した。約90㎡の広さのアパートから30㎡弱しかないモービルホームに移った時はとても狭く感じたが、すぐに慣れた。狭くてもプライバシーは保てるし、小さな庭に花を植えたりして「マイホーム」気分を味わうことができる。何よりも住居費を安く抑えられるのが1番だという。

彼はモービルホームの天井にソーラーパネル3枚を取り付け、電気を自家発電し、照明や扇風機など電気代の1部をそれで賄っている。「部屋が小さいのですぐに暖まるし、掃除は楽だし、バスタブも小さいので水道代は安くなる」と満足そうに話す。

連邦政府機関の退職者は通常、手厚い年金をもらえるが、彼は早期退職して受給額を減らされてしまったので、老後の生活費を切り詰めるためにモービルホームに移ったのだという。

アンディさんは最近、パーキンソン病の初期症状の疑いがあると医師に言われた。医療費については高齢者向けの公的保険メディケアでほとんどカバーされると思うので心配ないが、問題は病気の症状が進んできた時にどうするかである。少しぐらい体が不自由になっても訪問ヘルパーなどの支援を受けながらGMHで暮らし、自立した生活が無理となれば介護施設か病院に移るつもりだという。

安い住居費、住民同士の交流

モービルホームに住む利点として多くの人があげるのは、住居費を安く抑えられることだ。多くの場合、MHPに住むにはモービルホームを購入しなければならないが、2013年の調査ではモービルホームの平均価格は6万4千ドルで、一戸建て住宅の平均価格32万4千ドルの5分の1程度になっている。しかもジョンさんやアンディさんのケースでもわかるように、中古のモービルホームならかなり安く購入できる。

GMHでは他に1956年製のモービルホーム(床面積37㎡)を4000ドルで購入した人もいる。MHPの家賃(敷地料)は地域の物価水準などによって異なるが、私の取材の限りでは月300~600ドルくらいのところが多い。

米国勢調査によると、モービルホームに住む世帯の平均収入は米国全体の平均収入の半分程度で、ちょうど貧困層と中間層の間くらいに属するという。

利点の2つ目は、小さくても庭があるので椅子に座ってコーヒーを飲んだりしながら、マイホーム気分を味わえることだ。また、隣人のモービルホームと一定の空間があるので、プライバシーを保つことができる。アパートやコンドミニアムなどでは上階住民の足音や隣の子どもの泣き声、テレビの音などが聞こえて騒音に悩まされたりするが、MHPではそうしたことはほとんどない。

隣人との一定の空間があるので、プライバシーを保てる

3つ目の利点は子どもから大人・高齢者まで住民同士の交流を楽しめることで、特に一人暮らしの高齢者にとっては孤立の防止にもなる。MHPが1つのコミュニティとなり、天気の良い日などは住民がパーク内をぶらついたり、庭の手入れをしたりしながら、他の住民との会話を楽しむことができる。

GMHに30年近く住んでいる90歳の男性は毎朝起きると、10分くらい歩いてパークの外にある店に新聞を買いに行く。いつも2部買ってきて1部はオフィスに置いていくが、そうしながらマネジャーや他の住民と話したりしている。彼は健康維持のために毎日歩いたり、誰かと話をしたりして体と頭を適度に動かすように主治医に言われているそうだ。

GMHのマネジャーに話を聞くと、同パークには独居高齢者が10人くらい住んでいるが、孤立死はほとんど起きていない。なぜなら住民同士がお互いに声をかけ合ったり、見守ったりして何か異常があれば誰かが気づくようになっているからだ。いつも見かけている隣人が1日か2日モービルホームから出てこないようなことがあれば、オフィスに連絡したりする。だから、たとえ1人で亡くなったとしても、何日も発見されないということはないという。