日本と米国で高齢者の貧困問題を取材してみると、両国の貧困に対する考え方や取り組み方の違いに驚くことが多い。

例えば、日本人は「貧困は本人の責任だから、政府に頼るのではなく、自分や家族でなんとかしなければならない」と考える傾向がある。だから、どんなに極貧状態に追い込まれても、なかなか助けを求めようとしない。その結果、精神的に追い詰められて自殺したり、窃盗や強盗などの事件を起こしたりする下流老人が後を絶たない。また、周囲にも「貧困は自己責任で、自業自得だ」と考える人が多く、社会全体が貧困者に冷たいように思える。

一方、米国人の多くは「貧困は本人だけの責任ではない」と認識しているので、生活苦を抱える下流老人は積極的にかつ堂々と支援を求めようとする。また、日本の生活保護に相当する公的扶助の「補足的保障所得」(SSI)についても、あくまで個人の問題(他人がとやかく言うべきではない)と考えるため、受給者に対する偏見や自身のスティグマ感はあまりない。

このような考え方や取り組み方の違いが、両国の高齢者の生活苦や不安、幸福度の違いにつながっているのではないかと思われる。この「日米老後格差」の実態を明らかにし、日本の下流老人問題の解決策を提案した拙著『日本より幸せなアメリカの下流老人』(朝日新書)が9月13日に発売された。そこで今回は本書のハイライト部分を紹介させていただきながら、記事をまとめてみたい。

不安が少なく、幸福度が高い米国の老人

2012年8月に米主要紙『USAトゥデー』が発表した調査では、60歳以上の高齢者の3人に2人が現在の生活に満足し、4人に3人が将来のことを楽観的に考えていることがわかった。「現在の生活はどうか?」という質問に対し、どちらかと言えば満足している人が65%に上り、また、「5年後、10年後に生活の質は良くなると思うか?」との質問には「そう思う」という人が75%となった。

一方、内閣府による日本、米国、ドイツ、スウェーデンの65歳以上の男女を対象にした意識調査(2016年5月)では、日本は4カ国の中で、「友達づきあいが少なく、老後の備えが足りない」と感じている人が最も多いことがわかった。特に日本と米国を比較してみると、その違いは顕著だ。「困った時に家族以外で助け合える友人がいない」と答えた人の割合は日本が25.9%で、米国は11.8%。また、「貯蓄や資産が老後の備えとして足りない」とした人の割合は日本が57.0%で、米国は24.9%だった。

これらの調査結果からわかるのは、米国の高齢者の満足度や幸福度は日本よりはるかに高く、老後の不安を感じている人はずっと少ないということだ。

老後の不安についてはいくつかのパターンがある。1つは「貯蓄や資産など老後の備えが足りない」という不安、2つ目は中流老人が感じる「下流に転落したら、どうしよう」という不安、3つ目は下流老人の「家賃を払えなくなって、アパートを追い出されたらどうしよう」というような不安である。

これらの不安を和らげるには低所得高齢者への公的支援を充実させ、セーフティネットを整えることが必要だが、米国ではそれがある程度整っている。例えば、低所得高齢者に最低限の生活費を保障するSSI、餓死しないだけの食料を提供するフードスタンプ(食料クーポン)収入の3割を払えば、残りは政府が負担してくれる家賃補助、医療や介護をほぼ無料で受けられる公的医療扶助「メディケイド」などだ。

一方、日本は国民皆保険や公的介護保険が整っていて、本来なら高齢者が安心して暮らせる社会のはずなのに、生活苦の不安やストレスなどで追い詰められてしまう人が多い。生活困窮者への支援活動をしているNPOのスタッフによれば、低年金で暮らす人が貯金も底をついて無銭飲食をしたり、家賃が払えなくて窃盗や強盗をして逮捕されたりするケースが最近増えているという。