一方、この調査で最下位から3番目の23位だった日本の年金制度は十分性や持続可能性などの面で深刻な問題を抱えている。日本の高齢化率は26.3%(2015年)と世界で最も高く、高齢者人口の増加に伴う年金給付費の増大が財政を圧迫している。1960年代は現役世代10人で1人の高齢者を支えていたが、現在は2.3人で1人を支えなければならない。その結果、年金だけでは生活できない貧困老人が急増している。

デンマークでは年金制度が充実し、しかも医療や介護などが無料で受けられるので、老後の不安はほとんどない。高齢者は介護施設へ入るか、住み慣れた自宅にずっと住み続けながら、在宅介護を受けるかを自分で選択できる。また、掃除、洗濯、食事の準備、入浴・トイレ補助などの支援も受けられる。

しかし、良い事ばかりではない。国民は手厚い社会保障を受けられる反面、「世界一高い」と言われる税金を払わなければならない。所得税の最高税率は59%(2015年)で、年収33.58万デンマーククローネ(約504万円)超の所得層に適用される。一方、日本の所得税の最高税率は45%(同)で、適用する所得層は4000万円超と、デンマークのおよそ8倍である。他の所得層でもデンマークの方がはるかに高く、例えば年収420万円の人は日本20%、デンマーク43.48%となっている。

消費税も日本は8%だが、デンマークは食料品を含めて25%が課せられる。この高い税金に対し、国民は不満を持つどころか、むしろ喜んでいるという。なぜなら、払った分だけ社会保障などで返ってくると考えるからだ。

格差と平等と幸福感

デンマーク人にとって大切なのはフェアネス(公平さ)であり、若者から高齢者まで全ての国民が平等に社会サービスを受けられる制度なのである。その結果、デンマークは貧困や格差の少ない社会を実現している。OECD加盟国の中でデンマークの貧困率は5.3%(2014年)と最も低く、格差も最も少ない。

前述したように教育費が無料なので、貧困世帯の子どもでも能力があれば最高の教育を受け、社会のトップに上りつめることができる。それも結果的に貧困格差の縮小につながっているようだ。また、興味深いのはデンマークでは個人の自由度が高く、国民の多くが自分は自由だと感じていることだ。経済的な障害が少なく、社会保障が手厚いので、自分の思うように生きられると感じている人が多いのである。

個人の自由や平等を大切にする国としては米国が有名だ。しかし、米国は全ての人の自由・平等を掲げているが、現実には人種差別や貧困などの障害が多く存在し、理想とは程遠い状況にある。例えば、黒人として生まれた人は社会的に成功する確率が白人の約4分の1にすぎないとの調査結果もある。一方、デンマークは貧困家庭に生まれた人も能力さえあれば成功するための最良の機会を得ることができる。

どちらかといえば高福祉高負担の欧州型よりも低福祉低負担の米国型に近い制度を導入している日本も貧困格差がひどい。特に子どもと高齢者の貧困、若者のワーキングプアの問題が深刻で、社会保障の予算配分などを巡って世代間対立が起きている。一方、デンマークでは子どもや若者、高齢者に限らず、全ての国民に無料の教育・医療・介護などを提供しているので、貧困層同士で対立することはないという。

ワイキング氏は最後にこう話した。「多くの人が平等な社会というのは犯罪が少なく、ストレスも少ない社会です。何よりも競争に負けて取り残される心配がないのが良い。だからデンマーク人は高い税金も喜んで払う。もし税金が安くて、その分のお金で何か高級品を買えたとしても、私としては幸せを感じられない気がします。愛する人が皆、必要な社会保障を受けて幸せになれなければ、私自身も幸せになれないからです」。

日本はデンマークと比べると、税金は安いが、教育費や医療・介護費、住宅費などの自己負担が大きいので、トータルで考えると個々の負担割合はあまり変わらないかもしれない。それならデンマークのように高福祉高負担の制度にして、子どもから若者、中年、高齢者など全ての国民が幸せに暮らせるような社会にすることも1つの選択肢として考えても良いのではないか。いずれにしても日本人はただ増税に反対するのではなく、税金の使われ方についてもっと真剣に議論すべきである。

若者から高齢者まで全ての国民が幸せに暮らせる国をめざすデンマーク
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