高齢者の孤独感を和らげるための支援

高齢者向け支援を行っているNPO「シルバーライン」(以下、SVL)の設立者、エステル・ランツェンさんは長くテレビのレポーターや司会者として活躍し、世間の注目を浴び続けてきた。ところが2007年に夫を亡くし、突然ひどい孤独感に苦しめられた。外出先から帰宅して玄関のカギをあげ、誰もいない静まり返った家に入ることに耐えられなくなった。そこで彼女はその時の気持ちを正直に書いて、英国紙に投稿した。

すると、高齢の読者から2つの異なる反響が殺到した。1つは「あなたはいつも大勢の人に囲まれ、ソーシャルライフを楽しんできた。それなのになぜ急に寂しいなんて言うのか」。そしてもう1つは、「私も同じようにひどい孤独感に苦しめられている。でも、スティグマ(負の表象)や子どもに負担をかけるのが心配で、自分は寂しいとなかなか言えない」というものだった。

そこでランツェンさんは2012年、高齢者がひどく寂しさを感じたり、落ち込んだりした時、“24時間365日”いつでも電話できるサービスを提供するNPO「シルバーライン」(以下、SVL)を設立した。SVLの支援は主に孤独感を和らげるための電話サービスと、身体機能の低下やネグレクトなどの問題を抱える高齢者が必要な支援を受けられるようにするための情報提供である。

シルバーライン設立者のエステル・ランツェンさん(左)とソフィー・アンドリュース代表
シルバーライン設立者のエステル・ランツェンさん(左)とソフィー・アンドリュース代表

高齢者への電話サービスでは1日平均約1700人、週約1万人が電話をかけてくる(コーラーと呼ぶ)という。コーラーの約8割は初めてかけてくる人たちだが、一方、定期的にかけてくる人もいる。コーラーがボランティアと共通の話題や関心を持っている場合は、週1回程度、定期的に話ができる「シルバーライン・フレンズ」、あるいは複数のコーラーとボランティアが一緒に話せる「シルバーサークル」を利用できる。

SVLのボランティアは基本的に電話で話すだけで、直接会うことはない。もしコーラーが「地域のランチサービスに行きたいけど、身体が弱っていて行けない」という場合は、ボランティアが適切な支援を受けられる団体を見つけて紹介する。これを「シルバーコネクト」を呼ぶが、他に生活支援、医療ケア、介護などが必要な場合も同様に手助けする。

約3000人いるボランティアの年齢は若者から高齢者まで幅広いが、高齢者が比較的多い。その理由は自分も孤独を経験している人が多いので、コーラーの気持ちがよく理解できるからだという。ボランティアの面接では犯罪歴のチェックの他、高齢者の気持ちに共感する能力や問題解決能力を備えているかなどを重視するという。

年をとるとプライドが邪魔して自分の気持ちを話せなくなったり、身体が弱って引きこもりがちになってしまう人もいる。また、これはどこの国でもあり得るが、政治家やメディアが高額の医療費などを取り上げて、高齢者を「社会のお荷物」のように扱ったりする、それが繰り返されると、「自分は社会に負担ばかりかけている、無意味な存在ではないか」と考え、疎外感を募らせる人も出てくる。

そこでSVLの若いボランティアはコーラーたちに、「高齢者は社会にとって大切な存在だ」と伝えるようにする。中には電話だけでなく、手紙も書いて異世代間交流を行っている人もいるそうだ。加えて、ボランティアは常に孤独感を抱える高齢者に自信を取り戻してもらうように努めているという。それはなぜか。

広報担当者のアレクシア・ラサムさんは、「自信を取り戻せば自ら力を得て、自分を大切に思えるようになり、孤独の痛みから解放されます。そうすれば、SVLの支援も必要としなくなるのです」と話す。SVLはそのための手助けをしているのである。

寂しさを抱える高齢者からの電話を受ける「シルバーライン」のスタッフ
寂しさを抱える高齢者からの電話を受ける「シルバーライン」のスタッフ