世界が驚く日本の孤立死

世界的に高齢者の孤独・孤立の問題が注目される中、米国の主要紙『ワシントン・ポスト』が2018年1月28日付で、日本の孤立死について大きく報じた。神奈川県川崎市のアパートで亡くなった男性(54歳)の孤立死現場を片付ける遺品整理業者に同行取材して書かれた記事は、日本の問題を浮き彫りにした。

男性は非正規雇用のため仕事は不安定だったようで、部屋には履歴書用の写真があった。白髪頭を真ん中で分け、細いフレームのメガネをかけ、チェックのシャツを着て、ごく普通の男性に見えた。また、医師から処方された薬がたくさん残っていたが、彼がなぜ亡くなったのかは遺品整理業者も知らなかったという。

記事はニッセイ基礎研究所の調査を引用して、日本の孤立死件数は年間約3万件で、増え続ける傾向にあると報じた。その理由として主に家族構成の変化(3世代同居が減り、夫婦のみ・単身世帯が増えた)と、セルフネグレクト(必要な助けを求めず、放棄する)をあげた。

しかし、考えてみれば、家族構成の変化は日本に限らず、世界的に起きていることではないか。例えば、自主独立の精神の強い米国では、高齢者は老後を子どもや孫に頼らず、夫婦だけか単身で住むケースが多い。それでも独居高齢者が亡くなってから何日も何週間も発見されず、遺体が悪臭を放ち、隣人に迷惑をかけるというような悲惨な孤立死はあまり起きていない。私が取材した限り、そういう話はほとんど聞かないし、メディアも深刻な社会問題として報じていない。なぜかと言えば、米国の独居高齢者は社会的な繋がりをいろいろ持っていて、一人で亡くなっても比較的早く発見されるケースが多いからだ。

日本の根本的な問題は独居高齢者が増えていることではなく、高齢者の孤立度が圧倒的に高いことではないかと思う。

OECD20カ国の調査で(2005年)、日本は家族以外の人と交流のない人の割合が最も高いことが示されている。また、2016年に内閣府が発表した、米国、ドイツ、スウェーデン、日本の60歳以上の男女を対象にした調査でも、日本は「困った時に家族以外で助け合える人がいない」「病気の時に近所の人と助け合わない」という人の割合が最も高いことがわかっている。

私はSVLのラサムさんに、「英国でも日本のような悲惨な孤立死が起きているのか」を尋ねた。彼女は「そのような極端なケースは聞いたことがない」と答え、理由をこう説明した。

「例えば、今日のような悪天候の日は(その日、ロンドンは大雪だった)、“外へ出られない”という人がたくさん電話をかけてきます。一方、近所に一人暮らしの高齢者がいれば、隣人が声をかけたりするケースも少なくないと聞きます。英国ではこのような社会的インフラがあるので、極端な孤立死のケースに至らずに済んでいるのかもしれません」。

また、高齢者のセルフネグレクトについても日本だけでなく、英国でも起きていることは先述した。だから、SVLのボランティアは高齢者の気持ちを理解しようと努め、必要な支援を受けられるように手助けしているのである。

日本では10年ほど前から孤立死が頻発し、深刻化している。一部の自治体やNPOは対策を取っているが、政府が指導力を発揮して取り組むまでには至っていない。

欧米の研究者は、「高齢者の孤独・孤立は心臓病、高血圧、うつ病、認知症などの発症リスクや死亡リスクを高め、公衆衛生上の重要な課題である」と警鐘を鳴らしている。このような中、英国が「孤独担当大臣」を新設したが、日本の安倍政権も「孤立死担当大臣」を新設し、国をあげてこの問題に取り組むべきではないのか。