2. CRT(心臓再同期療法)

心臓の調子を整え、機能を高めるCRT ステージBからも効果が期待

 心不全とは、心臓のポンプ機能に障害が起こるために発症する病気です。機能障害には様々なタイプがあり、その一つは左右の心室の動きがずれるために引き起こされます。つまり、本来なら左心室と右心室がうまく調子を合わせて動くはずなのに、動きがずれるためにポンプ機能が弱まるのです。

 健康な心臓では、心房から心室へと伝えられる電気信号によって、規則正しい拍動が保たれています。ところが心臓に何らかの障害が起きると、電気信号の伝わり方にずれの出ることがありますが、これを伝導障害といいます。その結果、左室と右室の間で収縮のタイミングがずれたり、左室内の中隔と側壁の収縮タイミングがずれたりするのです。

 これらのずれを補正して、ポンプ機能を正常に戻す治療法が心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy)、略してCRTと呼びます。心臓を動かす電気信号の順序を整えるため鎖骨の下にペースメーカーを埋め込み、そこからリード線を心臓に挿入して電気信号を送ります。単なるペースメーカーが脈拍の遅い患者を対象としているのに対して、CRTは主に左心室のポンプ機能に障害を持った患者を対象としており、両心室ペーシングと呼ばれることもあります。

 CRTの効果には個人差がありますが、レスポンダーでは弱っていた心臓のポンプ機能が復活するため、体を動かしても苦しくなることがなく、息切れも楽になるなど生活の質の改善が見られます。さらに傷んでいる心筋自体が改善された結果、膨らんだ心臓が縮むなど心臓全体の状態が良くなった症例も報告されています。

 CRTの対象となるのは、拡張型心筋症などによる心不全で、心臓の同期不全があり、薬物治療では症状が改善しないケースです。心不全が重症化し、既に心筋そのものが痛みすぎている場合には効果を期待できません。基本的には心不全のステージCが適応となりますが、最近ではステージBの一部患者に対しても、心不全の発症を抑える効果が期待されるようになっています。

 一方で、CRTを行っても改善効果の見られない患者も存在し、ノンレスポンダーと呼ばれます。ノンレスポンダーの割合は、以前は約3割とされていましたが、最近は2割5分から2割程度にまで減っています。その理由は機器の改良にあり、今後もノンレスポンダーの割合は減少する可能性があります。

(監修:広島大学大学院 薬保健学研究科 循環器内科学 教授 木原康樹先生)