■トーク・セッション
座長:小川久雄 氏 国立循環器病研究センター理事長
パネリスト:小室一成 氏  東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
      斎藤能彦 氏  奈良県立医科大学第一内科学教室教授
      桑原宏一郎 氏 信州大学医学部循環器内科学教室教授
      野出孝一 氏  佐賀大学医学部内科学講座主任教授

日本循環器学会循環器疾患診療実態調査報告書(2016年度実施・公表)

◯ 質問3
心不全患者さんで糖尿病を合併している方が、どの強度、どの頻度でレジスタンス運動をすれば、筋肉量を増やせるか、ご教示ください。医師の先生方が、「バランスの良い‥」「~筋トレ取り入れるのも有効」というお話を耳にしますが、いったい何をどれくらいすれば良いのか迷うことがたくさんあります。目安をお教えください。(無記名)

回答:桑原氏

すでに心不全になってしまった人についてお話をします。以前は心不全の患者さんに対し、レジスタンス運動(※)はやってはいけないと言われていましたが、少し前から、むしろやった方が良いというように変わってきました。というのは、筋肉自体にポンプの機能があったり、筋肉の血流を増やすことで良い効果があることがわかってきて、レジスタンス運動を採り入れた方がいいということまではコンセンサスを得ています。ましてや糖尿病であれば、筋肉量を維持しないと糖尿病自体も悪くなります。

どのような強度で、どの頻度でやればいいかは、少なくとも私の知る限りではきちんとした正解はまだないと思います。色々な先生が言われているように、それぞれの施設で運動療法士さんや医師が試行錯誤しながらされているようです。

一般的には、まず落ち着いた状態であること。心不全が落ち着いた段階で、比較的軽度から始め、中等度くらいで症状を見ながら無理のない範囲で行います。頻度でいうと、レジスタンス運動は筋肉の回復を待つ必要があるため、有酸素運動のようにいきなり毎日からではなく、週に2~3回から採り入れてみましょう。具体的な数値としてまだコンセンサスはないため、これは今後の課題になってきます。

また、筋肉量をどう判断するのかといったマーカーも、まだきちんとしたものがないので、難しい課題かもしれません。

ただ、大雑把に言うと落ち着いた状態の患者さんで、比較的軽い軽度から始め、週に2~3回、無理がない範囲でレジスタンス運動を行うと筋肉量が保てます。長期の入院で筋力が落ちている方は、こうした運動を採り入れた方が良いと思います。

 レジスタンス運動
筋に負荷をかけたトレーニングのことをレジスタンス(Resistance:抵抗)運動と呼ぶ。レジスタンス運動は自分の体重やチューブ、ダンベル、バーベルなど負荷のかけ方によって方法が変わるため、種類は多岐に渡る。

座長コメント:小川先生

よく筋トレと言われますが、わかりやすく言えば週に3回程度、40分歩くことがAHA(米国心臓協会)でも推奨されています。日本でもそれが通じると思いますが、あまり難しいことを考えず週に3回程度、1日40分くらい歩いていれば問題ないと思います。

◯ 質問4
後期高齢者は難聴の方が多い。そこで医師がデバイスを通してスポットを当てて欲しい身体部位を伝えたり、アドバイスをするにあたり、意思疎通が取りにくかったり、時間が外来より余計かかってしまい、相当ストレスがかかるのではないか。また、このような問題を解消するような動きはありますか(遠隔治療のメリット・デメリットについて)。
今後、心不全だけでなく、遠隔治療でどこまでの循環器疾患を診察できるようになると予想されますか(遠隔治療の展望について)。(訪問看護リハビリステーション/看護師・保健師)

回答:野出氏

遠隔医療、オンライン診療はまだ始まったばかりで、あくまでも対面診療が基本です。遠隔医療は対面診療をした上で何カ月に1回は必ず外来に来てもらうことが原則です。その上で色々なケースがあります。当然、患者さんの中には難聴の方もいるし、認知症の方もいれば視力が低下している方もいるので、ケースバイケースで基本的には患者さんの希望によって選択していくということだと思います。

これからの課題に関しては、オンライン診療であっても、例えばマイクの調整したり、視力を活用した画像を使うなどの工夫はできます。現在、難聴の方は難しいですが、将来は文字に起こす。目で見ることによって理解してもらうなどの工夫をしていけば、今よりさらに多くの方に遠隔医療ができる可能性はあります。ただし、現状ではそこまで進んでいないので、やはり対面診療を基本とすることが今のところは良いと思います。

遠隔医療をどこまで広げるかについては、私も心不全や心筋梗塞以外に様々な方を診ています。透析、それから最近多いのは家族性の高脂血症ですね。家族性高脂血症だから、それほど症状に変化はありません。血液検査である程度判断をして処方できるので、恐らく心不全以外にもこういった家族性高脂血症や少し重症の高血圧に関してはオンライン診療が可能ではないかと思います。

将来的には心不全以外に心筋梗塞や透析を合併している方、重症の高脂血症、高血圧までオンラインの診療の対象になると考えています。ただ基本は対面診療なので、何カ月に1回は外来に来てもらった上での遠隔診療という形になります。

座長コメント:小川氏

視力が低下している場合には、大きな文字で書いていただくなどの対処法がありますね。

回答:野出氏

拡声器を使えれば普通の外来よりも大きな声で聞こえるので、機械をうまく活用すれば、逆の意味でそれがメリットになります。いずれ話した言葉が画面に出てくるようなものが出てくるかもしれません。今後は、AIが使えるのでそういった工夫があれば、もっともっと応用は利くと思います。

座長コメント:小川氏

例えば、耳の聞こえない人にカテーテル治療をするときは、本人の横で大きな文字を書いて、「こうしてくださいね」と伝えると、本人がOKと答えて治療することも行なっています。

第2回終わり(第3回に続く)