■トーク・セッション
座長:小室一成 氏 東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
パネリスト:斎藤能彦 氏 奈良県立医科大学第一内科学教室教授
      大屋祐輔 氏 琉球大学大学院循環器・腎臓・神経内科学教授
      筒井裕之 氏 九州大学大学院医学研究院循環器内科学教授

◯ 質問1
SGLT2阻害薬により心血管病を抑制したというデータがありますが、その作用機序上、利尿剤を投与した場合と同様の結果になっている可能性はないでしょうか(尿糖によって利尿作用が生じるので)。
チョコレートによる心不全予防効果と同様の機序と考えました。
(船橋 総合診療医/勤務医)

SGLT2阻害薬と利尿薬の作用機序
利尿効果で部分的に説明できる

回答:大屋氏

実を言うと、これについては様々な説があります。利尿効果によるナトリウム排泄については、要するに再吸収を阻害しているので、その関与はあるといわれています。例えば、サイアザイド利尿薬を服用して、糖尿病患者の予後が良くなったというエビデンスがあるかというと、あまりありません。確かに高齢の高血圧患者では利尿薬によって心不全は減っているものの、それは糖尿病患者に限るともいえないと思います。このことから部分的に利尿効果で説明できるのではないかと考えられます。

また、関与として1ついわれているのは、血圧の低下作用です。例えば5mmHgほど血圧が下がっていますが、講演でお話ししたように10mmHg血圧が下がると、心不全が約30%減るというので、その半分は15%であり、それなりの血圧低下作用は意味があるのではないかと思います。

その他でいわれているのはケトンが少し増えることです。心不全になったら、ケトンが心筋代謝に良いのではないかとされています。腎臓にとってケトンが優しいということで、CKDの病態は少し改善します。

同様に、心臓にとっても良い方向になっているのではないか、さらに交感神経が抑制されているのではないかともいわれています。作用機序についてはまだはっきりしていないところもありますが、脈拍や心拍数が落ちているので、このように複合的な作用が起こっていると考えられます。

多面的な作用を持つSGLT2阻害薬
今後、研究で作用機序が明らかに

回答:小室氏

SGLT2阻害薬を投与して半年ほどで有意差がついてくるので、早期は恐らく利尿剤かもしれませんが、大屋先生が言われたように、SGLT2阻害薬には多面的な作用があることが知られています。

グルコースの差があるのはもとより、インスリンが下がる。それから、血圧が下がる、内臓脂肪が下がる、体重も減る。これまでの糖尿病薬にない作用があるので、それが複合的に効いているのかもしれません。現在、世界中で多くの基礎研究がされているので、様々な作用機序については、今後明確なことがわかってくると思います。


◯ 質問2
HFrEF、HFpEFに関して治療薬のSTEPは同じでよいのか。
(東京 整形/外科/胃腸科 医師)

HFrEF、HFpEFの治療薬は同じでも
ガイドランに基づき治療法を選択

回答:筒井先生

HFrEFの場合、ACE阻害薬またはARB、β遮断薬、MRA、この3つの薬を、基本的に全ての患者さんに飲んでもらうことで、ステップが非常に明快です。一方、HFpEFでも、このACE阻害薬、ARB、β遮断薬、MRAという薬剤は、血圧も下げるし、左室の構造機能変化に対しても良い働きをするため、いずれも有効である可能性があります。

今日はお話しませんでしたが、同じような薬剤で臨床試験が行われたものの、残念ながらHFpEFの場合はHFrEFと違い、生命予後の改善効果や心不全増悪の優位性を明確に示すことができなかった薬があります。これは、同じようなステップを踏まえた治療のエビデンスが十分でなかったということです。

世界中のガイドラインを見ると、HFrEFとHFpEFの治療薬は同じもので良いかもしれませんが、治療の方法は異なります。HFpEFに関しては、この薬剤がいいというのではなく、高血圧や糖尿病、CKD、貧血などの合併症が多いため、現時点では、その併存症に対してそれぞれのガイドラインに基づく治療をするというにとどまっています。HFrEFとHFpEF、この2つの治療法については、それぞれに分けて治療を選択していただきたいと思います。

第3回終わり(第4回に続く)