■トーク・セッション
座長:小室一成 氏 東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
パネリスト:斎藤能彦 氏 奈良県立医科大学第一内科学教室教授
      大屋祐輔 氏 琉球大学大学院循環器・腎臓・神経内科学教授
      筒井裕之 氏 九州大学大学院医学研究院循環器内科学教授

◯ 質問1
循環器専門医への紹介のタイミングはいつか。(どのような症状、検査所見など)
(埼玉 大学病院勤務医/講師 腎臓内分泌内科)

その人にとってのベストのBNP値は異なる
調子の良い時と異なる場合は専門医に紹介を

回答:斎藤氏

第1回で心雑音についての回答したように、BNP的に言うと、100pg/mL、NT-proBNPであれば400pg/mLが1つの目安になります。

例えば、今までずっと何もなく、40pg/mLだった患者さんが100pg/mLになった時には、やはり専門医に紹介してください。ただし、かかりつけ医の先生方のところで、すでに心不全とわかっている患者さんをフォローされていて、再度紹介する際には重要なポイントがあります。

講演の中でも言いましたが、その患者さんにとってのベストのBNPの値は、それぞれ異なるため、一概に100pg/mLが目安になるとは言い切れません。そこで、患者さんの調子の良い時のBNPの値を覚えてもらい、そこから倍になる、あるいは3倍になる、それぐらいのタイミングで紹介していただくのがいいと思います。

もちろん、エコーを撮って今までなかったような逆流が増えるといったことが見つかれば、そこは専門医に紹介していただく方がいいと思いますが、私の講演に関係しているBNPでいえば、1つは100pg/mL、NT-proだったら400pg/mLをまず1つの目処にしてください。

多数の原因がある心不全。怪しいと思ったら
専門医に紹介して徹底的に原因を調査

回答:小室氏

心不全と疑われると感じた場合は、専門医に紹介していただいた方がいいと思います。心不全の原因はたくさんあります。高齢者で最も多いのは虚血性、つまり冠動脈硬化、または心筋梗塞を発症しているケースです。その場合はカテーテルで冠動脈造影をし、狭窄があってそこを解消することによって心不全が良くなる可能性があります。

また、拡張型心筋症は遺伝的な心筋の病気であり、すぐに改善することはできないかもしれませんが、中には原因がある二次性の拡張型心筋症というものがあります。その原因の中では、サルコイドーシス(原因不明の多臓器疾患)が有名です。これは拡張型心筋症と診断され、剖検した人の5%~10%程度は、実はサルコイドーシスだったといわれています。

サルコイドーシスは、非化膿性の肉芽腫ができる原因不明の病気ですが、その診断はかなり難しく、生前にできないことがあります。しかし、サルコイドーシスを生前に見つけることができればステロイド治療ができるため、治すことが可能です。ちょっと怪しいと思ったら、専門医に紹介していただいて、全身をくまなく調べて治療法を決めてもらい、その後はかかりつけ医の先生に毎月診てもらう、そうした連携が大切です。

心臓の機能が低下している人を見つけた時に、「あまり動いてないから、利尿薬をやっておこう」「ACE阻害薬をガイドライン通りにやっておこう」というのではなく、1度は徹底的に原因を調べるために、専門医に紹介していただくことが非常に重要です。

◯ 質問2
水分制限について、硬い浮腫著明ですが、口渇がある人にはどうしたら良いですか。
水分制限に関する基準はありますか。

水分制限の基本は減塩指導から
特に高齢者はこまめにチェックを

回答:大屋先生

水分制限についての判断は非常に難しいと思います。例えば1日3gとあまりにも少ない場合は別ですが、まずは減塩の指導をしていただくことが基本です。

実は食塩をたくさん採っていると口渇が出やすいため、塩分摂取量のチェックは大切です。単に「塩を採り過ぎていませんか」と聞くだけでは、高齢者は「きちんと気をつけています」と答えるので、具体的に何を食べたり飲んだりしているのかを聞くと、「梅干しは1日1個しか食べていません」という回答が得られたりします。

先生方も常にそうした場面に遭遇されていることと思います。また、尿中のナトリウムとクレアチンを計算してみると、大量に採っていることがデータでわかるので、こうした検査をこまめにやっていくと同時に、特に高齢者にはよく話を聞くことが第一歩です。

水分に関しては、ナトリウムが下がってきている時はある程度、制限をかけていく。また、コントロールができない重症の心不全の場合は、ある程度水分制限をかけていくことになりますが、通常は水単独の制限を主眼に心不全の治療をすることはありません。

心不全治療で重要なのは塩分制限
通常、過剰な水分制限は不要

回答:筒井先生

心不全の治療で、より重要なのは塩分制限です。大屋先生が言われた通り、ナトリウムは125を一応の基準にしていますが、低ナトリウム血症を伴う臓器鬱血がある場合には水分を制限するものの、不感蒸泄(発汗以外の皮膚および呼気からの水分喪失)だけで約1000mlある場合、その分の水分は補給することが必要です。

それ以上の過剰な飲水の水分制限について、通常の心不全の場合、それほど強くする必要はありません。ただ、低ナトリウム血症を伴う場合には800ml、場合によっては500mlといったように水分を制限してください。

口渇があるのは、それ以外の原因がある可能性があるため、その状況をあらためて評価することが重要です。

第4回終わり(第5回に続く)