提言1:国民の心臓病に対する関心を高め、理解を促進する
医療法人社団葵会 南八王子病院副院長 新 博次 氏

一般の皆さんには、一言で「心臓病」と言ってもなかなかイメージしにくいと思います。心臓病とは、狭心症や心筋梗塞で知られる心臓を栄養する冠状動脈の血液の流れの障害で発症する虚血性心疾患をはじめとして、そのほかに弁膜症、心不全、不整脈などを含む重要な疾患の総称です。多くの場合、生活習慣病に合併する動脈硬化を基盤としています。

日本人の死亡原因を見ると1位は「がん」と言われますが、高齢者で見ると心臓病と脳卒中を合わせた死亡数は「がん」に匹敵し、後期高齢者では、「がん」による死亡数を上まわっています。そして重要なポイントとして心臓病は、一度発症すると改善と悪化を繰り返し、患者のQOLを損ない、介護が必要となる原因の4分の1を占めています。

このように重大疾患でありながら、その解り難さから、一般の皆さんの理解が進まないことには、良質な医療を推進することは困難であると考え、提言1は、「国民の心臓病への理解促進」としました。

特に、最重要課題として、初めに取り組まなければならないのが「心不全」です。今日、慢性心不全の患者数は100万人と推測され、2035年には130万人まで増加してピークに達し、いわゆる「心不全パンデミック」が到来すると言われています。

このような状況を踏まえ、日本循環器学会では小室先生、斎藤先生を中心として、一般向けに、分かりやすい“心不全の定義”を発表していただき、理解の促進を図っています。

また、本会では、2017年6月から2019年5月までの3年にわたり、「心不全啓発キャンペーン」をスタートさせ、一般市民向け啓発セミナーのほか、かかりつけ医を対象とした専門医による心不全の治療や予防に関するセミナーも展開しています。

こうした取り組みを通じて、心不全は予防可能な疾患であることを広め、心不全の病態への理解と行動変容の促進に繋げていきます。具体的には、心不全の早期発見、早期介入が重要となるため、心不全の診断に有用な「BNP検査」、心エコー検査の検診への導入を働きかけること、そして、心不全のステージへの理解を広げることを図りたいと思っています。

心不全の予防とステージ
奈良県立医科大学第一内科学教室 教授 斎藤能彦 氏

一般向けの心不全の定義でも、心不全は「一度発症すると元には戻らず、進行して命を縮める病気である」と述べましたが、重要なのは、心不全の症状や進行の度合いを知ることで、自らがどの段階にあり、どのような予防や治療が必要なのかを理解していただくことです。

がんに進行の度合いを示すステージがあるように、心不全にも4つのステージがあります。ステージAは、心不全の症状はないものの、高血圧や糖尿病、喫煙、過剰飲酒など、生活習慣の乱れにより、発症のリスクがあるステージです。ステージBは、まだ心不全の症状はないものの、心筋梗塞や不整脈、動脈硬化など、心疾患を発症したリスクのあるステージ。

そして、むくみや息切れ、疲れやすさ、体重増加など、心不全の症状が現れるのがステージC。さらに症状が進み、心不全の入院を繰り返し、薬物療法、非薬物療法を実施してもなかなか改善せず、終末期ケアが必要となるのがステージDです。

この4つのステージは一方向であり、一旦症状が出てしまうと軽減することはあっても戻ることはありません。こうしたステージを知ることで、その段階でできる予防に皆さん自身も努め、ステージを進ませないことが大切です。また、本提言では、「心不全予防5カ条」を掲げ、皆さんに心不全予防として広めたいと考えています。

「心不全予防5カ条」
1 減塩(1日6gまでの摂取に努める)
2 禁煙(心筋梗塞や高血圧など重大疾患の発症リスクを高める)
3 適度な運動(週3回・1日30分のウォーキングなど)
4 血圧管理(140-90mmHG未満を維持する)
5 体重管理(急激な増加・減少に注意する)

また、心不全の診断やステージ把握に有効な検査は、BNP検査であること。そして、心臓病予防、心臓病の重症化予防のために、一般健診に心エコー検査を導入することが重要であるということを申し述べさせていただきます。

第1回終わり(第2回に続く)